フラメンコ・スケッチズ カインド・オブ・ブルー


マイルスの『カインド・オブ・ブルー』のラストナンバー、
《フラメンコ・スケッチズ》。


kindblue.png


この曲は、アルバムの目玉の
《ソー・ホワット》や《ブルー・イン・グリーン》に
どうしても意識の焦点が集中しがちなゆえ、
最後のおまけ曲みたいな感じで、
あまり真剣にというか、じっくりと聴く機会が少ない人も
少なくないんじゃないかと思うのですが、
あらためて腰を据えてじっくりと聴くと、
これは、ほんと、いい~曲なのです。


マイルスのミュートトランペットはもとより、
ビル・エヴァンスのデリケートなピアノが
なんとも時間をとろけさせてくれるのです。


このニュアンス、エレピのほうが出しやすかったんでしょうけど、
当時はまだ、アコースティックピアノの時代。


後年、マイルスはエレクトリックピアノを自身のバンドに導入して、
キース・ジャレットやチック・コリアらに弾かせていますが、
マイルスがエレピに移って行った理由が、
この曲を聴くとなんとなくわかるような気がするんですね。


平野啓一郎さんは「リキッドなニュアンス」と表現されていまいたが、
音の輪郭が「ソリッド」なアコースティックピアノに対して、
輪郭が曖昧でまろやかなエレピの音色は、まさに「リキッド」。


ときに、曖昧でミステリアスなニュアンスを漂わせたいときに、
アコースティックピアノで奏でる和音は、
響きが妙に具体的で、
明暗がはっきりし過ぎるきらいがあるのかもしれません。


ただ、ビル・エヴァンスはそのあたりのことを承知していたのか、
(そのあたりというのはマイルスが出したいニュアンスのこと)
非常に巧く、固い音のピアノで
液体のようにとろけるようなニュアンスを表現しています。


エヴァンスも後年エレピのアルバムを出しています。


彼自身も、近代の作曲家、
たとえばドビュッシーの影響を受けていることもあり、
あまりに露骨で分かりやすい「暗い!」、
あるいは「明るい!」というニュアンスよりも、
ぼんやりと浮き出るような響きを好んでいたのでしょう。


そんなことを考えながら、空間と時間にぼんやりと蕩(とろ)けゆく
《フラメンコ・スケッチズ》を聴き、
一日を締めくくるのも悪くないと思うのです。


Kind of Blue
Kind of Blue



▼こちらのページにレビューを書いています。
カインド・オブ・ブルー/マイルス・デイヴィス

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック