パウエルとモンク


あくまで個人的な話ですが、私の場合、ジャズに迷ったら、モンクかパーカー、パウエルに還ればいいと思っています。

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とはいえ、あまりジャズに迷ったことってないんですけどね(笑)。

時代とかスタイルとか新しい古いとかは関係なしに、聴きたいときに聴きたいものを聴いているだけなので。

ただ、何を聴こうか一瞬躊躇してしまうときは、上記アーティストのコーナーの棚に手が伸びているということが多いですね。

特に、バド・パウエルとセロニアス・モンクは私にとっては特別な存在。

ジャズの「肉」の部分と「頭」の部分、
この両巨人の両要素ををくっつけてしまえば、
たいていのモダンジャズのおいしいエッセンスというか養分は事足りてしまう。

……と書いてしまうと、少し大袈裟かもしれませんが、私の中ではわりとそんな感じで落ち着いてしまっています。かれこれ20年ぐらい前から。

もちろん、

肉=演奏力、スピード感、グルーヴ
頭=演奏への眼差し、アプローチ、作曲、構造

という2つの要素に強引に還元してしまうつもりはないのですが、いつの時代も、この2つの要素は欠かせぬ要素だと思っています。

20年以上もモンクやパウエルを聴きとおしていると、当然、感じ方も変化してきますし、それに伴って愛聴するアルバムも微妙に変わってきています。

たとえば、パウエルにおいては長い間、とにもかくにも絶頂期の演奏に魅せられていた私は、その時期の中でも特に『ジャズ・ジャイアント』や『ジニアス・オブ・バド・パウエル』が座右のアルバムでした。


ジャズ・ジャイアント / バド・パウエル, カーリー・ラッセル, レイ・ブラウン, マックス・ローチ (演奏) (CD - 2011)
ジャズ・ジャイアント


Genius of Bud Powell [Import, From US] / Bud Powell (CD - 1988)
ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル


今でもこのアルバムの自分の中における位置づけは変化はしていないのですが、最近では後期の演奏が発するなんともいえぬ磁場にやられています。

2枚だけ挙げると、ここ最近CDのトレイに乗る頻度の高いアルバムは、『アット・ザ・ゴールデン・サークル vol.3』と、最晩年の『リターン・オブ・バド・パウエル』が多いですね。

At the Golden Circle 3 [Import, From US] / Bud Powell (CD - 2007)
アット・ザ・ゴールデン・サークル vol.3


バド・パウエル/ザ・リターン・オブ・バド・パウエル
ザ・リターン・オブ・バド・パウエル


奇しくも、両アルバムには《アイ・リメンバー・クリフォード》が収録されているのですが、もちろんこの曲も良いのですが、もちろんそれ以外の演奏も良い。

いや、良いという言葉が適切なのかどうか。
「どうあがいても惹きつけられてしまう」といったほうが良いかもしれません。

具体的にどこがどうと指摘できるような魅力ではなく、むしろ、適切に言語化できない痒くてもどかしい要素に惹きつけられているのです。


いっぽうモンクの場合は、パウエルの場合とは正反対で、今も昔も愛聴アルバムは変わっていません。
しいて2枚挙げるとすれば、ブルーノートの『ジニアス・オブ・モダン・ミュージック』と、『セロニアス・ヒムセルフ』でしょうね。


ジニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.2 [Limited Edition, Original recording remastered] / セロニアス・モンク, ミルト・ジャクソン (演奏) (CD - 2005)
ジニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol.2



セロニアス・モンク/セロニアス・ヒムセルフ+1
セロニアス・ヒムセルフ


この2枚は、セロニアス・モンクというミュージシャンの鬼才ぶり(そう、まさに鬼才です)が遺憾なく発揮され、彼の想像性が輝いている傑作といえましょう。

モンクのリーダー作や、参加作はほぼすべて耳を通しているのですが、やはり、上記2枚は別格ですね。

モンクの場合、バド・パウエルのケースとは反して、私は後期の作品より、キャリア初期の作品のほうが圧倒的に素晴らしいという思いは、今も昔も変わりません。

もちろん、リラックス気分で聴くぶんには、後期の、具体的にいえば、チャーリー・ラウズがテナーサックスで参加していた時期の作品も悪くはありません。
しかし、これら一連の作品は、上記2枚のアルバムで発揮した創造性の煌きが、「芸」として昇華されてしまっているような気がしてならず、かつての創造性にあふれた表現のセルフコピーにしか聴こえてこない、と書くといい過ぎか。

新しいことをやろうとする勢いよりも、かつて築き上げた自分のスタイルをなぞっているぶん、安定感はあるのですが、そのぶんシャープな音の勢いが削がれてしまっているのです。

だからこそ後期のモンクは安心して聴けるというメリットもあるのですが……。

今日発行のメルマガで2000号を迎えますが、2000回ジャズについて考えたり書いたりした現時点での私のパウエルとモンク観です。

3000号になったら、また感じ方が変わっているかもしれませんね。

パウエル、モンクは一生聴き続けることには変わりありませんが。

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