『スコット・ラファロ その生涯と音楽』

ビル・エヴァンス・トリオをささえた名ベーシスト、スコット・ラファロ本の決定版『スコット・ラファロ その生涯と音楽』(国書刊行会)が発売されました。
没後50周年記念出版とのことです。

スコット・ラファロ その生涯と音楽
スコット・ラファロ その生涯と音楽

著者はラファロの妹、ヘレン・ラファロ・フェルナンデス、
翻訳は、ここのところすごい勢いでジャズ本を出しまくっている音楽評論家の中山康樹氏(実際、六本木のあおい書店2Fの音楽本コーナーに行くと、面出しor平積みされているジャズ本は氏の著作ばかりなのです)と、我が古巣のジャズ喫茶・四谷「いーぐる」の常連さんの吉井誠一郎氏です。

さらに、この本の編集者は、私が以前勤めていた出版社の大先輩で、中山氏翻訳の『マイルス・デイヴィス自叙伝』や、「いーぐる」の後藤マスターの著書『ジャズ・オブ・パラダイス』の編集者でもあり(後藤vs寺島論争の陰の仕掛け人です)、ほか、作家の楡周平や高嶋哲夫、姫野由宇らを発掘・編集し、さる文芸評論家からは「名伯楽」とも称されている富永虔一郎氏(ちなみに富永氏には今月発売された私が企画編集した本の編集もお手伝いしていただきました、感謝!)。

それぞれの方のプロフィール、実績を知っている私からしてみれば、どう考えてもこれ以上の贅沢はないでしょう、というぐらいの鉄壁の布陣で作られた本なのです。

お値段はちょっと高いのですが、それを上回るボリュームと情報量なことは請け合い。
ベースを弾いている私にとっては、ラファロの個人史ももちろん興味深いのですが、やはりジェフ・キャンベル(イーストマン音楽学校・助教授)が寄稿した第14章「スコット・ラファロの音楽II」が興味深い内容です。

ラファロのベース奏法についての分析が豊富な譜例を用いてされているのですが、ことソロ奏者として脚光を浴びがちなラファロの演奏を、どちらかというと「伴奏コンセプト(どういう発想でバッキングをしているのか)」のほうに焦点を当てて解説をしているところが興味深いのです。

特に「ディープで強力にスウィングするグルーヴを作り出す能力と一体となった、タイム感に対するセンスである。(中略)どんなドラマーと共演しても、彼はドラマーとうまく結びつく方法を見つけだしていた」
という記述からもわかるとおり、ベースソロや、エヴァンスとのインタープレイ(インターアクション)を中心に語られがちなラファロのベースプレイにおける根底にあるベーシックな部分に脚光を当てていることは特筆すべきことでしょう。

『ポートレイト・イン・ジャズ』からは《枯葉》、《ペリズ・スコープ》、《いつか王子様が》、
『エクスプロレイションズ』からは《スウィート・アンド・ラヴリー》、《デトゥアー・アヘッド》と、エヴァンスファンおなじみの名曲(演奏)にスポットを当てて、具体的な解説、解析をおこなっており、しかも特に楽器をやっていない人にも分かりやすい解説となっているので、この章はお手元にあるCDを再生しながら読めば、きっと新たな発見があることでしょう。

いずれにしても読み応えのあるジャズ本の登場です。
さきほど、ざっと目を通し、読みおえたところですが、いまいちど、今度はじっくりと味わいながら再読してみたくなるジャズ本が『スコット・ラファロ その生涯と音楽』なのです。
オビのコピー「スコットのコートを、ビルはぼろぼろになるまで着ていた・・・」も、エヴァンス好きにはそそりますね。

スコット・ラファロ その生涯と音楽


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