ピアノトリオ好きが求めるのは“癒し”なのか!?~放送第81回『プレスティッジ時代のマイルス黄金のクインテット』(3)



今回の番組テーマ「プレスティッジ時代のマイルス黄金のカルテット」中では、tommyさんと私の間で意見の対立がありました。

「小川のマイルス」こと『ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット』の《ステイブルメイツ》をかけた直後の出来事です。
マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット

マイルス~ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット

  • アーティスト: マイルス・デイヴィス,ジョン・コルトレーン,レッド・ガーランド,ポール・チェンバース,フィリー・ジョー・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2009/03/18
  • メディア: CD

tommyさんと私の「ピアノトリオ好き」に抱くイメージには、かなりのギャップがあるようです。

その一部を抜粋してみましょう。

(『ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット』の《ステイブルメイツ》の演奏終わる)

雲「『ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット』より《ステイブルメイツ》をお届けしました。tommyさん、このアルバムは、持ってはいるけど、あまり聴いていない類の演奏なんじゃないですか?」


tommy「う~ん、マイルスという1枚で聴こうかな? と思ったときに、ビジュアルが頭にポン!と浮かんでこないよね」


雲「“タンスの肥やし”っていうけど、このアルバムは“レコード棚やCD棚の肥やし”にしている方も多いと思うんですよね」


tommy「でも、持っている人は多いと思うよ」


雲「うん、持っている人は多いと思います。持っているけど、あまり聴いてない人は、時々このアルバムを引っ張り出して聴いて“あ~脱力~”って1年に2回ぐらい感じてくれると嬉しいです」


tommy「そうだね、ピアノトリオ好きな人が、ちょっと管が入っているのを聴きたいなーと思ったときに聴くといいかもね」


雲「え? それってどういうことですか?」


tommy「要するに、ピアノ好きって、夜の……なんというかな、夜の心落ち着く時間が好きなわけですよ」


雲「え? そうなの?」


tommy「うん」


雲「そんなもんっすか?」


tommy「ピアノトリオ好きは、刺激的な音は聴きたくないっていうのもあると思うんですよね。そこで、こういうユルい感じのサウンドだったら、ピアノトリオ好きも和めるんじゃないですかね」


雲「う~ん、でもさー、tommyさん、俺思うんだけど、それってピアノトリオ好きをバカにしていると思うんだよね。ピアノトリオ好きに対する偏見だと思いますよ。」


tommy「いや、ボクも昔そうでしたからね。そりゃもう自分の体験からすると、夜は仕事をして家に帰ってくれば、刺激的なものはあまり聞きたくない!」


雲「いや、そういう人もいるとは思うけど。でも、現代ピアノトリオのスピード感があってドラムが前に出ているエキサイティングなピアノトリオ好きな人が、今のtommyさんの発言を聴いたら、俺たちに対する偏見じゃないか!? バカにするんじゃねー!って怒り出すかもしれませんよ」


tommy「いや、それはねぇ、そういう人は、ジャズ聴きの中でも、また一部なのよ。」


雲「そうかなあ?」


tommy「うん、そう。全体的にピアノトリオ好きは、ピアノトリオ云々よりも、自分のそのときの気持ち……こう、ゆったりしたいという気持ちがピアノ好きに走らせるんじゃないですかね?」


雲「そうかなぁ? よくわかんないけど。 というのも、ボクはどちらかというと管入りのほうが好きだし、ピアノトリオも刺激的なものが好きだから、その感覚がよくわからないんですよね。 それにほら、tommyさんってサラリーマンじゃないでしょ? フリーでデザイナーやっているからさ、なんとなくサラリーマンに対する“疲れたオッサンはこんなもんだろ”的な偏見も言葉の隅にチラッと感じられたんだけど、そんなことないですか?」


tommy「いや、そんなことない。 僕も!そういうことがあるんですよ!ってことなんですっ。 みんなそういうことがあると思うんです。雲さんはね、ガンガンに聴くほうが好きじゃない? ボクは、雲さんに出逢う前は、“癒されるジャズ”という部分のジャズ聴き方が自分の中にあったの。だから、あなたに会ってから、僕は、色々聞かなきゃダメだな~ということに気づいた部分もあることだからさ~。
たいがい、友達とかもいなくて、ジャズのアルバムを集めていって、年齢重ねてゆくとね、わりとこう、もう、好きなアルバムが決まっちゃうじゃないですか? そうすると、あれ聴こう、これ聴こうってことがなくなるんですよ。自分が知っている中で枝葉を増やして聴いていこうということがなくなるの。今はもう、50歳も過ぎれば、そう激しいのは聴かないですよ」


雲「そうなんだ~。でも、60歳過ぎて激しいのを聴いてウム!と唸っている四谷の某マスターもいらっしゃるんですが……(笑)」


tommy「あのね、それは特別なの!(笑)」


雲「特殊なんですか?」


tommy「それは“特殊ですよ”。特殊!」


雲「特殊ですか(笑)」


tommy「特殊!特殊! 大半の人は、やっぱり、こう自分の聴き方のスタイルがある程度きまっていると思うんですよ。」


雲「でも、ジャズって、“激薬”的な要素もあるじゃないですか? 気付け薬みたいな。だから、癒しの要素なんてボクは求めないですけどね……」


tommy「あのねぇ、雲さん、それは逆よ! 癒し系の人が多くて、激しいのを聴いている人が少ないのよ」


雲「でもさー、昔、ジャズ喫茶が全盛の頃はさ、アイラーとかコルトレーンばかりがかかかっていたわけでしょ?」


tommy「まあそうだけど」


雲「当時は、皆、激薬を浴びにジャズ喫茶に通っていたわけじゃないですか? だけど、今は癒しが求められてるってことは、もしかして、みんなジャズを聴くことに疲れちゃったの?」


tommy「昔は激しいのを聴いてた人も、結婚し、子供も出来、会社でもある程度の地位が出来、そろそろ定年が近づいてくるとさぁ……」


雲「丸くなっちゃうわけ?」


tommy「丸くなっちゃうというよりは、生活スタイルなの。生活スタイルの中に音楽を入れてゆくと、そう激しいのばっかり聴いてられないでしょ?!」


雲「じゃあ、べつにジャズ聴く必要ないじゃん。癒しだったらさぁ、オペラとかモーツアルトでも聴いていれば、そっちのほうが癒しですよ。」


tommy「バカにしてない?ジャズ聴いている人のこと?」


雲「いや、逆よ、逆、逆。tommyさんが思い描くジャズ好きな人たち像と、ボクが思い描くジャズ好き像のイメージって、ギャップがあると思ったので、ちょっと突っついてみたかったの。」


話はまだ続き、tommyさんとしては、多くのピアノトリオ好きがよしとするピアノトリオのアルバムは、ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』なのだそうです。
ワルツ・フォー・デビイ+4

ワルツ・フォー・デビイ+4

  • アーティスト: ビル・エヴァンス,スコット・ラファロ,ポール・モチアン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2007/09/19
  • メディア: CD

もちろん、私もこのアルバムは好きですが、べつにこのアルバムに癒しは求めないな~。

そのへんの感じ方が、tommyさんとは微妙にかみ合わないところでもあり、そこがまた、番組中に時おり生じる不協和音が、かえって、番組の中のアクセントになっているように感じたのですが、皆さんはどうお感じでしょうか?


あと、ピアノトリオが好きな人って、本当に「癒しオジサン」がほとんどなのでしょうか?(tommyさんが仰る、結婚して、子供できて、会社である程度の地位ができたいう人ということであれば、やっぱりオジサンのことを指すと思うんですよね)

そのあたりも、知りたいところではあります。


●まとめ
tommyさんが思い描く「ピアノトリオ好き」像
・刺激的な音(トランペットやサックス?)を聴きたくない人
・ゆったりとした気分になりたい人
・ジャズに癒しを求めている人
・昔はジャズ喫茶で激しいジャズを聴いていたかもしれないが、今では、結婚し、子供も出来、会社の地位も確立し、定年も近い人(つまりオジサン)
・上記生活スタイルの変遷とともに、聴く音楽も変わった人
・自分の聞き方のスタイルが確立されているので、新しいものを聴こうとは思わない人

たしかに、なんとなく、そういう人もいるとは思うのですが……。

しかし、仮にそういう人ばっかりだとすると、日夜真剣にプレイをしているジャズマンや、彼らの音源を一人でも多くのジャズ好きに届けようと腐心している制作サイドの方々にとっては、あまりに歯ごたえ&張り合いのないことなのではないでしょうか?

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