今井美樹の『flow into space live』



『ジャズ批評』誌や、ご自身のブログにて健筆をふるわれているジャズマニア・いっきさんが、先日のブログで、今井美樹について取り上げられていたので(今井美樹『ルトゥール』最高!)、私も真似して(笑)、今回は今井美樹をテーマに書いてみます。

私は、旦那の布袋寅秦が「オレ様を愛することにプライドを持ちやがれ」と言わんばかりの趣旨の内容を作詞作曲して、女房に歌わせるという、オトコのオンナ支配の構図がミエミエな歌詞もメロディも気に食わない《プライド》という曲を除けば、ほぼ今井美樹の曲は好きです。

PRIDE

PRIDE

  • アーティスト: 今井美樹,布袋寅泰
  • 出版社/メーカー: フォーライフ ミュージックエンタテイメント
  • 発売日: 1996/11/04
  • メディア: CD

山下久美子と離婚して、今井美樹に走った旦那・布袋寅秦が作詞のこの歌は、深読みをすると、世間&元・女房から「泥棒猫」的な視線と誹りを受けグラつくかもしれない今井美樹の心を先回りし、心の防波堤的な機能を持たせてもいるのかもしれません。だとすると、「なんかヤな感じよね~」という評価がグルリと180度回転して、なかなか配慮の行き届いた優しい心遣いじゃん、とも思います。

ま、そんなことはどうでもいいのですが、とにもかくにも、今井美樹の音楽って、聴いているときの気分は、ボサ・ノヴァを聴いているときの清涼感に近いものがあります。

なので、ジャズや、その周辺のボサノバなどの音楽を聴いて「ジャズ耳」、いや失礼(笑)、「ズージャ耳」をお持ちの方は、けっこう今井美樹のサウンドに反応するんじゃないかな?

ジャズファンでも、いっきさんのような隠れ(?)今井美樹ファンは多いのではないかと思うのですが、いかがでしょう?

私が彼女のアルバムでいちばん好きなのは、ライブ盤の『フロウ・イントゥ・スペース・ライヴ』です。


flow into space LIVE MIKI IMAI TOUR'93 / 今井美樹

今井美樹ならではの清涼感溢れるヴォーカルはもちろんのこと、

・いよいよライブがはじまるぞ!という期待感&ワクワク感
・じわりと盛り上がってゆくボルテージ
・しっとりと落として、バッチリと盛り上げる
・絶妙なコーラス
・ボリボリとしたベースが浮き立ったミックス

など、オリジナルのアルバムのナンバーに、ライブならではの楽しさが加味されていて大好きなのです。

特に《サテライト・アワー》のイントロが面白い。

フレンチ・ヒップホップのデヴィッド・デクスター・Dの《ジャック・ル・ジャズマン》のイントロがネタにされているんですよ。

ジャック・ル・ジャズマン

ジャック・ル・ジャズマン

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 1993/04/21
  • メディア: CD


ジャズをベースにフレンチ・ラップを展開していたDavid Dexter.Dは、一時期注目されていたフレンチ・ジャズ・ヒップホップの旗手でしたが、彼がジャズを下敷きにした表現を、さらに今井美樹のライブでは素材にしてしまっている。
しかも、過激なフランジング効果をかけて。

そこがまた面白い。

ライブの後半は、フレンチ・ヒップ・ホップのサンプリングネタをさらにサンプリングしたイントロのナンバーを、ゆったりとした8ビートで盛り上げた後、さらにボルテージアップ。

私が大好きな《幸せになりたい》。
これで、いっきにノリノリ、ライブもヒートアップ。

IvoryII

IvoryII

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: フォーライフ ミュージックエンタテイメント
  • 発売日: 1993/11/10
  • メディア: CD

アルバムバージョンだと、複数のコーラス隊のアレンジになっているのですが、ライブ盤では、シンプルにコーラスの女性は1人で頑張っています。

そこがまた生々しくて勢いがあって好き。
アルバムバージョンのアレンジは、良くも悪くも作りこまれ過ぎたサウンドが重たいんですよ。

下に貼りつけたYoutTubeの映像で、スタジオ録音バージョンを聴いていただけますが、このバージョン、悪くはないんだけど、私からしてみれば、ライブ・バージョンに比べると、オケとボーカルとの一体感が希薄なんですよ。
なんだか、バックのサウンドと、ヴォーカルの距離があり過ぎるように感じます。



それに比べて『flow into space live』バージョンは、ヴォーカルとバックのアンサンブルがバッチリと一体化して、ひとつに溶け合っている。一体となって盛り上がってゆく様を楽しめる。
だから、やっぱり私はライブ盤がイチオシだよな~。


この曲は、メロディもリズムも良いのですが、なにより歌詞がいいよね。

オトコの私が言うのもヘンなんですが、
くだらねぇオトコと我慢して付き合うぐらいなら、そんなヤツは蹴り飛ばして、とっとと見切りをつけて、一人で自立して生きたほうが100倍マシだわ!的な女性が私、好きなんですよ(笑)。

そういう女性は、
多少性格悪くても全然オッケー!
多少カンチガイはいっていても全然オッケー!
です(笑)。

寂しさと、不安と、思い切りの良さを同居させたこの歌の主人公は、私的価値観から言わせてもらえば、カッコいいオンナです(笑)。

べつに80年代に流行した上野千鶴子的フェミニズムに毒されているわけではなく、私の場合はもっともっと単純で、片岡義男的ハードボイルド・テイストな世界と、そこに登場するクールな女性が好きなんでしょうね。

「スイカを撃つ女」とか「一日中空を見ていた」とか「熟睡する女の一例」とか「味噌汁は朝のブルース」あたりに登場する芯の強い女性が好きなんデス。

で、この曲なんですが、
主人公の女性の心象風景を
都会のありふれた景色で描写した歌詞が心憎いんデス。


身も蓋もない言い方をしてしまえば、
「バツイチ女の上京物語」
な歌なのですが、
そんな女性の姿を、
「決して哀しくも淋しくもないんだよ」と感じさせてくれる。

前向きに新しい道を踏み出した彼女に乾杯!という愛のある目線が、ソフトな今井美樹の歌唱と、ノリのよい8ビートから感じられる。

非常にスマートで都会的な歌だと思います。

で、ラストの《ブルーバード》に繋がります。
この3曲の流れが、私、すごく好きなんですね。

ま、他の曲も全部好きなんですが。

で、いったんライブが終了したかと思ったら、アンコールナンバーの《瞳がほほえむから》で、アルバム終了。

なんという素晴らしい曲の流れなのでしょう。

この流れは、バド・パウエルの『ジ・アメイジング・バド・パウエル vol.5 ザ・シーン・チェンジズ』における、
《クレオパトラの夢》から《ダンス・ランド》を経て《ボーデリック》にいたるまでの、自然かつメリハリに富んだ流れに匹敵するほどの、恐るべき完璧さです(笑)。

ザ・シーン・チェンジズ+1

ザ・シーン・チェンジズ+1

  • アーティスト: バド・パウエル,ポール・チェンバース,アート・テイラー
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2008/03/26
  • メディア: CD


残念ながら、『フロー・イントゥ・スペース・ライブ』のCDは現在、絶版(品切れ?)らしく、中古でお求めいただくしかないと思うのですが、ブックオフあたりに行けば、100円とか250円ぐらいでもしかしたら安く売られているかもしれないので、見つけたら、是非ゲットしておくことをお薦めします。

必ずや、レジで払った金額以上の満足感を得られることでしょう。



余談ですが、さきほどアマゾンで検索したら、ライブのDVDは出ているようですね。ただし、これに関しては未見なので、CDほどの気持ちよさと満足感を得られるかどうかはわかりません。
Tour de MiKi flow into space live [DVD]

Tour de MiKi flow into space live [DVD]

  • 出版社/メーカー: フォーライフ ミュージックエンタテイメント
  • メディア: DVD


曲順もCDとはちょっと違うしね。
ご覧になった方がいらっしゃれば、是非感想をお聞かせください。

この記事へのコメント

  • いっき

    雲さん。こんばんは。

    あははっ、私の5倍くらいの勢いで今井美樹の良さが語られているので、感動(笑)!

    ちなみに私は隠れファンではなく、”堂々”と今井美樹ファンです(笑)。

    『フロウ・イントゥ・スペース・ライヴ』は入手せねば。

    ”ズージャ耳”というか、同好の志が集まれば、自然とそこには”特定の感性”を共有していることに気づきますよね。
    2010年03月02日 00:30
  • >ちなみに私は隠れファンではなく、”堂々”と今井美樹ファンです(笑)。

    いやはや、失礼しました。

    “隠れ”は、私だったのかもしれません(笑)。

    「今井美樹が好き」というたびに、「プライドっていい曲だよね~」と返ってくることが多く、それに辟易していつの間にか引きこもってしまっていたのかもしれないです(笑)。

    ライブ盤は是非聴いてみてください。
    2010年03月02日 08:37
  • m

    「幸せになりたい」のスタジオ録音版は、コーラスとして作詞・作曲者の上田知華さんの名がクレジットされてるので、それはそれで貴重です。たしか上田さんは今井ライブには出演してないし、記憶に間違いがなければ、上田さんの唯一の今井作品への演奏参加です。(なお、これはどこかのブログにコメントしました。重複してたらごめんなさい)。
    2010年04月17日 21:58
  • m

    flow into space liveは限定盤らしく、Bookoff(20店以上)を見て回っても一度も見つけたことがありません。今井の「retour」「love of my life」「elfin」あたりは腐るほどあるのですが(笑)
    2010年04月25日 12:54
  • sol y sombra

    4年も前の書き込みにコメントさせていただきます。
    私も『flow into space live』が大好きで、かれこれ、20年も聴いております。
    (amazonにCDレビューも書きました。)
    しかし、"SATELLITE HOUR"のあのライブだけでしか聞かれなかったアレンジに
    元ネタがあるというのは初耳で、早速、iTunes STOREで"jack le jazzman"を購入し、
    「なるほど」と感動しております。
    SATELITTE HOUR~幸せになりたい~Bluebird~瞳がほほえむから の流れが良いというのは
    全く同感です。
    因みに、最初、レンタルしたCDをコピーしていましたが、どうしても欲しくなり、CDより高いLD版を買ってしまいました。
    (DVD版は持っていませんが、LD版と同じでしょう。というか、同じであるという事を前提に、amazonのDVDレビュー書いちゃいました。
    もし、違っていたらどうしよう・・・)

    >ご覧になった方がいらっしゃれば、是非感想をお聞かせください。

    LDを最近再生していないので、うろ覚えですが、演奏がCDと違います。収録会場が違ったのでしょうねぇ。
    (CDと同じ演奏を期待していたので、ちょっとがっかり。まぁ、その後、中古CDも買ったのでいいですが。)
    あと、LDの映像でブラスが生演奏じゃないのが分かったのが、ちょっと残念だったかなぁ。
    でも、MCも入ってるし、毎回全く同じ演奏している訳じゃないことがわかるし(当たり前ですが)、それはそれでいいのかなぁと。
    LD版は、"flow into space"で終了します。CD版だと、1曲目(Lluvia)出だしの効果音?の意図が分かりませんが
    "flow into space"がエンディングに来ることによって、オープニングとエンディングを統一して効果を狙っているんだなぁと分かります。
    最後の美樹さんの「おやすみなさい」の一言が印象的です。
    2014年03月31日 03:50
  • sol y sombraさん


    >SATELITTE HOUR~幸せになりたい~Bluebird~瞳がほほえむから の流れが良いというのは
    全く同感です。


    ありがとうございます。

    ですよね~( ̄∀ ̄)v


    >最後の美樹さんの「おやすみなさい」の一言が印象的です。


    あっ、言われてみれば!

    たしかに、いい一言ですね。


    また、久々に聴きたくなっちゃいました!
    2014年03月31日 10:17

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