矢野沙織ライブの感想



先日、渋谷の「duo music exchange」にて行われた矢野沙織ファイナル・ライブで演奏された曲目は、以下の通りです。

1.スターダスト(口笛入り)
2.ブルース・ウォーク
3.アリゲーター・ブーガルー
4.ザ・キッカー
5.ファイヴ・スポット・アフターダーク(ドラムソロ中に衣装替え)
6.ス・ワンダフル
7.スイート・ケイク
8.ドント・エクスプレイン
9.ハウ・ハイ・ザ・ムーン

アンコール
10.バードランドの子守唄(衣装チェンジで登場)
11.コンファメーション
12.ウイスキーが、お好きでしょ(口笛入り)

一緒に行ったtommyさん、いっきさんもブログにレポートをアップしています。
tommy's jazz cafe
⇒いっきのJAZZあれこれ日記

基本的には、新譜の『ビ・バップ・アット・ザ・サヴォイ』中心の選曲でしたが、
BEBOP AT THE SAVOY

BEBOP AT THE SAVOY

  • アーティスト: 矢野沙織,ジム・ロトンディ,Hideo Ichikiawa,ランディ・ジョンストン,Tomio Inoue,パット・ビアンキ,Hideo Yamaki,Fukushi Tainaka,Satoshi Onoue,Yoshiaki Sato,Whacho
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2010/01/20
  • メディア: CD

ビリー・ホリデイのナンバー(Don't Explain)は、1枚前の『グルーミー・サンデイ』より、
GLOOMY SUNDAY-Tribute to Billie Holiday-

GLOOMY SUNDAY-Tribute to Billie Holiday-

  • アーティスト: 矢野沙織,グレート栄田ストリングス,金子雄太,田鹿雅裕,細野よしひこ,市川秀男,朝川朋之,林正樹,鬼怒無月,井上富雄
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2008/12/03
  • メディア: CD

また、アンコールには、キャリア初期のトレードマークとでもいうべきパーカーナンバーの《コンファメーション》も、パーカーフレーズをたっぷりと織り交ぜ(主にヴァーヴの『ナウズ・ザ・タイム』バージョンのアドリブ・フレーズを中心に構築されていた)、アップテンポで快調に飛ばしていました。
YANO SAORI

YANO SAORI

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2003/09/25
  • メディア: CD


個人的な感想を書くと、
今回の選曲は、アルバムの収録ナンバーが中心ということもあるのでしょうが、
やっぱり、マイナーブルースやマイナー調の曲、
アドリブが演奏曲目の多くを占めていたこともあってか、
アンコールのパーカーフレーズがビシバシと織り交ぜられた《コンファメーション》を聴いているときが一番幸せでした。

なんというか、酔いが回って気持ちよくマッタリしているときに、冷たいミネラルウォーターを飲んで気分がシャキッとなった感じに近いのかも。

マイナー調の曲や、泣きのはいった矢野流マイナー調のアドリブはもちろん悪くはないのですが、やはり演奏レパートリーの中で、多くのパーセンテージを占めてしまうと、どうしても、気持ちがベタッと湿ってきがちです(あくまで、私の場合はね)。

これは、私特有の感覚かもしれないので、よく言われる「日本人はマイナー好き」という“定説(?)”が本当ならば、むしろ、今回の選曲と、ステージの流れは正解なのだと思います。

ただ、私の場合は、どうしてもパーカーやビ・バップの音楽が好きということもあり、ビ・バップ・フレーズがビシバシ出てくるナンバーのほうが聴いている時の気分はシャキッとするのですね。

だからこそ、アンコールで演奏された《コンファメーション》がとても素晴らしく感じたのです。


今回のライブで改めて感じたことですが、矢野さんのアドリブのアプローチには大きく分けて2種類あるな、と。

《ブルース・ウォーク》や《ファイヴ・スポット・アフター・ダーク》などのシンプルなブルースナンバーや、マイナー調の曲のアドリブは、どちらかというと、ブルース&ソウル色を前面に押し出したアドリブを展開し、
《コンファメーション》などの、もろバップナンバーは、それこそパーカー時代のかっこいいながらも、複雑な符割りと、♯や♭の嵐の音階のフレーズ(いわゆるビ・バップフレーズ)でアドリブを繰り広げていました。

これは、曲調にあわせて、完全にアドリブの発想を使い分けているな、と感じました。(そして、もちろん、そのアプローチの選択肢は正解だと思います)

ブルーノート・スケールを主軸に展開する前者のタイプのアドリブ・アプローチは、フレーズを採譜してギターで弾けば、そっくりそのままリズム&ブルースのフレーズに使えそうなメロディラインです。

音色がアルトサックスゆえ、クールに聴こえるかもしれませんが、これと同じフレーズをギタリストが思い切り“泣き”を効かせて弾けば、クサいけれども、ムードあふれる演歌、……いや(笑)、リズム&ブルース調の内容になることでしょう。

これらのタイプのアプローチの演奏は、一緒に口ずさめるほど親しみやすいアドリブなうえに、マイナー調なクサみが分かりやすく提示されているので、おそらく会場の多くのファンは、《ブルース・ウォーク》や《アリゲーター・ブーガルー》で展開されたアドリブに魅了されたんじゃないかと思います。

へんな喩えになってしまって申し訳ないのですが、
あまりJAZZを聴いたことのない人に、
「ジャズって、こういう音楽なんだよ」
と聴かせれば、
「そうか!いいね!」
と、すっと納得させてしまうような、いわゆる「一般的な日本人が思い描く、漠然としたジャズという音楽のイメージ」を、とても分かりやすく体言した演奏だったと思います。

一緒に行ったいっきさんが、ブログに
「スリルは感じなかったけどいいライブだった」
というようなことを書かれていますが、重度のジャズ中毒患者のいっきさん(笑)が漠然と感じたニュアンスは、まさにこのことなのではないかと私は推測します。

もちろん、だからといって、ライブそのものが悪かったとは思いませんし、むしろその逆で、衣装替えもあったり、田井中さんの楽しいMCもあったりで、ショーとしてはとても楽しめるライブだったということは言うまでもありません。

べつに、私は音だけを聴きにライブに足を運んでいるわけではないのですから(音だけだったらジャズ喫茶行く)。

特にサックスの歌わせ方、アドリブの盛り上げ方は、まだ23歳の若さとはいえ、さすが百戦錬磨のJAZZガールだなと感心することしきりでした。

ただ、個人的な好みをいうと、ブルースギター的なソロ構成よりも、ビ・バップ的なアプローチのほうがしっくりきたし、沙織さん自身も、水を得た魚のようだった。
スピード感がまるで違うんですよ、バップアプローチのアドリブは。

もっとこのようなタイプの曲を増やしてくれると、もっと楽しめたのにな~とは思いました。

ちょっと、微妙にくぐもった感じの独特の音色は、バップ特有のうねうねとした旋律がとっても良く合うのですよ。

デヴィッド・サンボーンやキャンディ・ダルファーのようなクリアで突き抜けるような音色とは一線を画する音色ゆえ、シンプルで明快なフレーズでしゃくりあげるアプローチもいいけれど、個人的には、もっとビ・バップ的スピード感を感じさせてくれるナンバーをたくさん演奏してくれると今後はもっと楽しめるのにな~と思った次第です。

もちろん、今回のライブはとても楽しめたので、上に書いたことは、ジャズ中毒者の贅沢な願望であることは重々承知はしていまーすわーい(嬉しい顔)

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック