放送第63回「マッコイ・タイナー特集」(2)

村上春樹の『海辺のカフカ』を読まれましたか?

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/02/28
  • メディア: 文庫

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/02/28
  • メディア: 文庫


読まれた方は、下巻でジョン・コルトレーンの《マイ・フェイヴァリット・シングズ》が登場したことを覚えてますか?

これから読む方もいらっしゃるでしょうから、どこに登場するかは内緒ですが(笑)、じつにピタリとハマったところに、ピタリとくる選曲だと思います。

ジョン・コルトレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングズ』というアルバムには、コルトレーンが生涯演奏しつづけた《マイ・フェイヴァリット・シングズ》の初演が収録されています。

テナーサックス奏者のコルトレーンがソプラノサックスに挑戦したことでも有名なアルバムです。

正直、はじめたばっかりのソプラノサックスを吹くコルトレーンは、おっかなビックリ的に吹いているようなたどたどしさが漂っています。

マイ・フェイヴァリット・シングス(+2)

マイ・フェイヴァリット・シングス(+2)

  • アーティスト: ジョン・コルトレーン,マッコイ・タイナー,スティーヴ・デイヴィス,エルヴィン・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/02/20
  • メディア: CD


しかし演奏回数を重ねるにつれて、たとえば、『セルフレスネス』での演奏のように、どんどんアグレッシヴな演奏に成長してゆくのですが、少々たどたどしい感じも漂う初演も、それはそれで捨てがたい味があります。

私の場合は、コルトレーンのソプラノサックスも良いのですが、それ以上に、この演奏ではマッコイ・タイナーのピアノが大好きです。

中盤の長めのピアノソロ。

『海辺のカフカ』のあるシーンのように、同じところを堂々めぐりしているような感じもしつつも、この反復がとても気持ちがよかったりします。
この頃よりモード奏法を取り入れたマッコイのピアノは、聴きようによっては、少々クラシカルな響きも放ち、優しくらせん状の曲線を中空に軽やかに描きます。

私がはじめてマッコイを聴いたのは、この演奏でした。
マッコイ・タイナーというジャズピアニストって、結構いいな~と感じたのも、この演奏が最初でした。

マッコイという名前は、新谷かおるの傑作コミック『エリア88』のマッコイじいさんと同じだ!と思ったので、一発で覚えました(笑)。

コルトレーン・カルテットのマッコイのエキサイティングなプレイや、『サハラ』『フライ・ウィズ・ザ・ウインド』などのリーダー作にもずいぶん興奮しました。

ロボットアニメや特撮ヒーローものが好きな私にとっては、マッコイのピアノは、分かりやすい“エキサイティングの素”でした。
いいぞ~、いけいけ、ガンガンやれ~!と応援したくなるような直球勝負の熱い演奏が多いんですよ、マッコイには。
たとえば、『サハラ』の《エボニー・クイーン》なんかは、ヤバいぐらいに私の中のヒーロー心を刺激しまくります(笑)。
Sahara

Sahara

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ZYX
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD


しかし、この手の熱い演奏も100回ぐらい聴くとさすがに飽きてきます(笑)。←そりゃそうだ
で、結局、またまたコルトレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングズ』に戻ってきて、しみじみとした気分になり、「やっぱええなぁ~」となる(笑)。

後年のマッコイの演奏に比べれば、シンプルすぎるぐらいのあっさりアプローチの《マイ・フェイヴァリット・シングズ》ではありますが、これぐらいのお茶漬け的あっさりさも悪くありません。
いや、悪くないどころか、すごくいいです(笑)。

ちなみに、《マイ・フェイヴァリット・シングズ》の次の曲、《エヴリタイム・ウィ・セイ・グッバイ》のマッコイのピアノソロも泣けます。

このセンチメンタルさ加減が大好きな私は、ちょっと前まで『快楽ジャズ通信』のエンディングテーマに使っていたぐらいですから。

この演奏も、コルトレーンはソプラノサックスを吹いていますが、まだ縦横無尽に扱いきれないタドタドしさが、逆にこの曲の場合はプラスに作用しているのかもしれません。
いい塩梅のセンチメンタルさ加減です。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック