放送第64回『デューク・エリントン特集』(2)

デューク・エリントンはとっつきづらいかもしれないけど
(私がそうでした)、
なかなか聴く気のおきないジャズマンかもしれないけれど
(私がそうでした)、
いったんエリントンの魅力に開眼すると、これまでの自分が見ていたジャズの視野が少なくとも3センチは広がり、4センチぐらいは深くなります(私がそうでした)。

なぜなら、多くのジャズミュージシャンが有形無形の形でエリントンの音楽から影響を受けているからです。


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無形の代表格といえば、マイルス・デイヴィスでしょうね。
彼の表現には、いわゆるエリントン臭は感じません。

しかし、彼は素晴らしいバンドリーダーとしてのエリントン、素晴らしいグループサウンドの表現とリーダーシップを、エリントンとは別の形で極めようとしていたに違いありません。

エリントンが亡くなったときに哀惜の念をこめて録音した沈痛な追悼曲《ヒー・ラヴド・ヒム・マッドリー》で聴けるマイルスのオルガンとトランペットを聴くだけでも、いかにマイルスはエリントンのことを敬愛していたのかを推し量るに十分でしょう。

Get Up with It

Get Up with It

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony/Columbia
  • 発売日: 2000/08/03
  • メディア: CD


有形な形で恩恵を受けているのは、なんといってもセロニアス・モンクとチャールズ・ミンガスでしょうね。

モンクは十本の指でエリントンのオーケストラのエッセンスを再現しようとしたんじゃないかと思います。特にエリントン漬けになった後にモンクのピアノを聴くと、エリントンナンバーではない曲からもエリントン的な汁がしたったっていることが良く分かります。

やれ不協和音だ、タイミングがヘンだと言われがちなモンクのピアノではありますが、彼のたった数本の指が生み出す濁った響きの中には、エリントンオーケストラの管楽器数本分の塗り重なった色彩が封じ込められているように感じます。

▼世界的リヴァーサイド研究家の古庄紳二郎さんもイチオシの、モンクがエリントンを弾いたアルバム
Plays Duke Ellington

Plays Duke Ellington

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Universal
  • 発売日: 2007/03/27
  • メディア: CD


いっぽうミンガスは、大人数編成のエリントンのオーケストラのサウンドを少人数編成のコンボで表現しようとした人。

彼はもちろんベーシストとしても一流ですが、それ以上に作編曲家としての才能に秀でたものがあります。

彼がつくり出す曲と、彼のグループのアンサンブルには独特な臭みがあります。
濃厚でコクのあるテイストは、さながら獣の匂いとでもいうのでしょうか、特濃の和歌山ラーメンの“獣汁”のような匂いをプンプン放っていますが、それはエリントンのエッセンスをミンガスなりに昇華させた結果なのです。

たとえば彼の代表作のひとつに『直立猿人』というアルバムがありますが、これなんか、たった5人の編成なのに、それ以上の編成のように錯覚してしまうのは、ミンガスの編曲の賜物ですが、向けられている目線は明らかにエリントンです。

直立猿人

直立猿人

  • アーティスト: チャールス・ミンガス,ジャッキー・マクリーン,J.R.モンテローズ,マル・ウォルドロン,ウィリー・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: Warner Music Japan =music=
  • 発売日: 2008/02/20
  • メディア: CD

このようにモンクやミンガスは多大なる影響をエリントンから受けています。

そして、彼らの後輩のジャズマンたちの多くは、多かれ少なかれモンクやミンガスの曲を演奏しているし、解析もしていることでしょう。

特に、モンクの音楽には、多くのジャズマンの研究対象になっていますね。

ソプラノサックス奏者のスティーヴ・レイシーは、モンクの研究家としても有名でしたし、ドイツのピアニスト、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハにいたっては、3枚組のモンク全曲集『モンクス・カジノ』をリリースしているほどです。

Reflections: Steve Lacy Plays Thelonious Monk

Reflections: Steve Lacy Plays Thelonious Monk

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Original Jazz Classics
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD


Monk's Casino

Monk's Casino

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Intakt
  • 発売日: 2007/11/12
  • メディア: CD


このようにエリントンから直接の影響を受けてはいなくとも、間接的に、エリントンの子分格のジャズマンを媒介に、多くのジャズマンは、意識的にせよ無意識的にせよエリントンの遺伝子を受け継いでいるといっても過言ではないでしょう。

さて明日は、アフターアワーズで紹介した、エリントン遺伝子のリレーゲーム的な音源を紹介したいと思います。

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