オススメ本『人を動かす質問力』

嘘か誠か真実は分かりませぬが、「ジャズ評論家のトホホな都市伝説」の一つとして誠しやかに語られている話があります。

その評論家先生は、来日した某ジャズマンのインタビューをすることになったのですが、そのときの質問内容が、
「あなたが196●年の▲月◆日に録音した作品についてですが……」
だったのだそうです。

いきなりウン十年も前にレコーディングをした演奏について尋ねられたジャズマンは「?」状態になってしまったとのこと。

そりゃそうですよね。

「あなたは、13年前の6月20日に何をしていましたか?」と聞かれて、あなたは、その日のことをいきなり思いだせますか?

映画『ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(邦題:恋のゆくえ)』のピアニスト、ジャックのように、自分の演奏した日付を正確に記憶しているジャズマンならともかく、毎日が演奏、演奏の連続なジャズマンは、普通、いきなり演奏した日付で質問をされても覚えているわけがありません。

アルバムや曲名、あるいはそのときの共演者を伝えた上での質問なら、話は違ってくるのですが、いきなり日付けだけを相手にぶつけるような質問は、「知りたいことだけ聞きだそう」という意識が露骨に出た、相手に対する心遣いや配慮がいささか欠けた行為だと言わざるをえません。

しかし、私は彼のことを笑ってられません。

なぜかというと、番組にゲストをお招きした際に、とても重要な能力が「質問力」なのです。

「快楽ジャズ通信」にご出演いただくゲストの皆さんは、EMIミュージックジャパンの行方均さんや、ピアニストの橋本一子さんのように、番組以前から面識のある方を除けば、ほとんどの方が初対面です。

収録前に顔合わせ、打ち合わせをして本番に臨むまでの時間はせいぜい10分、長くても30分とありません。

その時間の中、初対面の方と打ち解け、大雑把ですが、番組の方向性を確認しあわなければなりません。

もし、私がマヌケなことを言って先方のご機嫌を損ねてしまったら、番組の勢いやムードが台無しになってしまいます。

少なくともご機嫌を損ねないよう、そして、出来るだけ面白い内容をお話していただくよう、自分なりに気を遣ってはいるつもりなのですが、後で思い返すと、冷や汗モノなことを言ってしまっている私……。

そんな私にとって、弁護士の谷原誠さんがお書きになられた新書『人を動かす質問力』はすがる思いで読んだ一冊です。

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)
人を動かす質問力/谷原誠


この本を読めば、いかに質問が対人関係においても、ビジネスにおいても、さらには自己啓発においても、とても重要なファクターなのかということがよく分かります。

タイトルの「人を動かす」というのは、本当に絶妙かつ言い得て妙な言葉だと思います。
なぜなら、問いかけ(質問)することなしに、人は行動しないし、前進もしないんですよね。

人に発する質問も、自分の内面に問いかける質問も、結局は「思考」を強制的に特定の方向に向けさせる力があるからです。
思考のみならず、行動の方向すらもフォーカスさせてしまうだけの力をも有しています。

だから、トンデモな質問をすると、当然、思考の矛先がトンデモな方向に設定されてしまう。

それだけ「質問」というのは重要だし、難しい。

以前、ビジネス雑誌を編集していたときに、トヨタのカンバン方式の記事を扱ったことがあるのですが、トヨタは、質問を現場で5回繰り返すそうなのです。

「なぜなぜ5回」といって、耳にされたことのあるビジネスパースンも多いと思いますが、これはトヨタ自動車の改善活動を語る上では欠かすことの出来ないキーワードです。

発生した問題に対して、原因をとことん追求する姿勢。
真の原因(真因)を探り当てるまでには、トヨタでは「なぜだ?」を5回繰り返すのです。
何度も繰り返し自問自答を繰り返しているうちに、真因にたどり着く。

この「なぜだ?」を繰り返す習慣が徹底しているからこそ、社員の一人一人の「自分で考える力」が自然と育くまれ、それがトヨタの強さの源泉になっているということです。

そういえばそんなことも昔勉強したなぁ、なんて懐かしがっている私ですが、では、何かの問題に対して5回も「なぜだ?」と常日頃考えているか?というと、考えてませーん(笑)。

だいたい3回目でギブアップ(涙)。
情けなや。

でも、それだけ質問ということは大事だということは分かります。

質問の内容ひとつで、相手をその気にもさせるし、落胆もさせてしまう。
結構怖いものなんですよ、「質問」って。

だからこそ、せっかく番組にご出演いただくゲストの方には、出来るだけ楽しい気持ちで収録に臨んでいただきたいし、願わくばノリノリな気分になって欲しいと思ってはいるのですが、そう思っている私に一番欠けていて、かつ火急に必要な能力が「質問力」なのです。

いつもほんと、行き当たりばったりの気分まかせで喋っているからね……。

で、この本、とても参考になりました。

質問の大切さを再認識すると同時に、いままで読んできたビジネス書のエッセンスが、かなり上手にコンパクトに凝縮されているんですよ。

実際の法廷で行われる質疑応答の例がふんだんに引用されているので、これは法律方面の方対象の本かと思われるかもしれませんが、さにあらず。

この本はむしろビジネスパースンこそ読んで欲しい本なのです。

特に営業マンは必読ですね。

「売る」ための営業トークのヒントが満載です。

そう、さきほど私は営業“トーク”と書きましたが、営業マンのトークというと一方的にまくしたてるようなイメージかもしれませんが、じつは違うんです。
顧客のニーズ、要望を引き出し、それに応えるのが優秀な営業マンだとすると、まさに顧客のウォントを引き出す武器こそが「質問力」なんですね。

先述したとおり、質問とは相手の思考を強制的にフォーカスさせる強力なツール。
つまり、良い質問をする人ほど、じつは相手の思考を方向づけ、大袈裟に言うと相手の考えをも操っているといっても過言ではないのです。

さすが、敏腕弁護士が書いた本なだけあって、「質問」が仕事の大きなウェイトを占める(はず?)の私にとっても目からウロコな内容でした。

まえがきに書かれている「質問の力を身につけると、あなたは人生を思い通りにコントロールすることができるでしょう」も、あながち大風呂敷ではないと思います。

平易で分かりやすい文章ゆえ、サクサク読めるのも魅力なこの本、働くすべての人々にご一読をオススメしたいと思います。

▼「考える」を諦めない、すべての人々のために!

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