
Miyaさんも私も大好きなエリック・ドルフィー。
番組でかけたのは、『ラスト・デイト』の《サウス・ストリート・イグジット》というブルースでした。

- アーティスト: エリック・ドルフィー,ミッシャ・メンゲルベルグ,ジャック・ショールス,ハン・ベニンク
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2003/04/23
- メディア: CD
ブルース形式の曲ではありながら、ピアノのミシャ・メンゲルベルクの独特な和声感覚と、ドルフィーの大気圏外ソロフレーズのおかげで、私の場合、この曲がブルースだと気付くのにはかなりの時間を要しました。
番組中では、「300回ぐらい聴いてようやく気付いた」と言ってますが、たぶん300回は聴いてないだろうなぁ。けっこうたくさん聴いてはいるけど。
Miyaさんも「この曲、ブルースなんですよね~。最初は気付かなかった自分が悔しい」と仰ってましたが、プロミュージシャンですら気付かないほど、曲の骨格が彼ら独自の個性で換骨奪胎されているんですね。
A♭という珍しいキーのブルース《サウス・ストリート・イグジット》。
この演奏、Miyaさんは聴くたびに鼻血が出そうになるので、「鼻血ブルース」と呼んでいるそうです(笑)。
お美しいお顔のMiyaさんが発する「鼻血ブルース」という言葉は、彼女の佇まいからはあまりに似つかわしくないのですが、サバサバと心地の良い物腰のMiyaさんが発する「鼻血」という言葉は、妙に自然でもあります。
Miyaさん、おもしろい(笑)。
ドルフィーのスピード感といい飛翔感といい、それはもう素晴らしいものがあるのですが、私はミシャ・メンゲルベルクのピアノも負けず劣らず素晴らしいと思っています。
もちろんこのナンバーに限らず『ラスト・デイト』全部においてそうなんですが。
ドルフィーのバックでドンヨリとセロニアス・モンクのピアノを陰鬱なスカンジナビア的曇り空にしたような和音。
また、ジェリ・アレンやアンドリュー・ヒルにも通ずる濁りの成分の混じった重たいソロ。
特に、ドルフィーのフルートソロが終わりに差し掛かるあたりで、メンゲルベルクは、リズミックな和音を奏で、この和音を続けたまま自分のソロパートに突入するのですが、そこがまたなんとも言えずカッコいい。
メンゲルベルクのピアノは、ドルフィーもかなり気に入っていて、このレコーディングが終わった後もしばらくヨーロッパを演奏で旅してまわるけど、「カフェ・モンマルトル」というライブハウスに出ることになっているから、そこでまた一緒に演奏しようよと彼(彼のトリオ/ジャック・スコールズ+ハン・ベニンク)を誘っていたぐらいなのです。
その後ドルフィーはベルリンで亡くなってしまいましたから、この約束は実現しませんでしたが、もしドルフィーが生きていて、彼らとコペンハーゲンで再会セッションをしていたら、きっと『エリック・ドルフィー・カルテット・ライブ・イン・カフェ・モンマルトル』というタイトルのライブ盤が出ていたかもしれません。
聴きて~!(笑)
それぐらい、メンゲルベルクのピアノトリオとドルフィーはいい具合にマッチしているのです。
それこそ、演奏を重ねれば、ファイヴ・スポットなどで熱演を繰り広げたブッカー・リトルとの双頭コンボに匹敵するぐらいのバンドになっていたかもしれません。
嗚呼残念。
でも、たった1枚でも、このような素敵な演奏を記録を残してくれたことに感謝しなければいけないのかもしれませんね。
様々な私の想いをよそに、ドルフィーのフルートとメンゲルベルクのピアノが、彼らが作り上げた磁場の強い超重力空間をすべりぬけてゆきます。
曲が終わり、私は冗談交じりにMiyaさんに尋ねました。
「鼻血、出ましたか?」
「……もう、かなりヤバいです」
やっぱりMiyaさん面白いです(笑)。
▼こちらも鼻血もの。Miyaさんの新譜『オリエンタル・サン』
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