放送第51回『ダラー・ブランド(アブドゥーラ・イブラヒム)』特集(1)

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Good News From Africa/Dollar Brand

おまたせしました!
「快楽ジャズ通信」第51回目レポートです。

遅くなりましたが、本日ようやく同録(放送音源)が届きました。

番組の内容は、昨日に一足早くいっきさんがアップしてくれています。
「いっき」のJAZZあれこれ日記

いっきさんのレポートを、ほほー、そうかそうか、なるほど~と頷きながら読んでいた私。
収録のときに分が喋った内容を忘れてしまうなんて、まるで『任侠ヘルパー』の夏川結衣様、あるいは『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジンが演じたような若年性アルツハイマー?(笑)

全然関係ないけど、夏川結衣といえば、
私と夏川さんは同年生まれ、
息子と夏川さんは誕生日が一緒です(笑)。

いまでも、『結婚できない男』の最終回の阿部ちゃんとのやり取りが大好きでよくDVDを見返しています。



よく、「結局、雲さんは夏川結衣が好きなんじゃなくて、夏美先生が好きなんだよ」と言われますが、そうなのかもしれません(笑)。

ラストシーンで、阿部ちゃん演じる桑野と、夏川結衣演じる夏美先生が2人で橋を渡るとき、橋の手すりを夏美先生が嬉しそうにポンポンと叩く演出。
細かいようだけど、この演出がものすごく大好きなんですね。

いつもは阿部ちゃんがポンポンと叩きながら橋を渡り、そのポンポンっぷりで、阿部ちゃん演じる桑野信介の心情を物語らせていたのですが、ラストに夏美先生が橋をポンポンするからこそ、二人の心の距離が縮まったことが、セリフなしで描いている。

ま、このシーンを始めて見たときの興奮は、こちらに書いた駄文に譲るとして、いつのまにか横道にそれたお話を軌道修正します。

ダラー・ブランド特集。

まず冒頭で、私がトランス状態になってダラー・ブランドの経歴や蘊蓄を説明をしているときのバックで流したのが、『アフリカン・ピアノ』より。《ブラジョー・フロム・キリマンジャロ》。


これは、北欧のジャズクラブ「カフェ・モンマルトル」でのライブ録音です。
全編ピアノ一台で、途切れることなく、強烈にアフリカの大地を感じさせるピアノが弾かれており、まぎれもなく彼を代表する名盤。
この強烈な一枚が、今でもダラー・ブランドのイメージとして定着している方も多いことでしょう。

番組本編、最初の一曲は、私が一時期、朝の目覚め用に頻繁にかけていた曲です。
『グッド・ニュース・フロム・アフリカ』の《ナジカナズ・ベル》。



このエンヤから出ているアルバムは、大学時代の友人が所有しており、いつも彼の家に出這入りし、寝泊まりしていた私は、朝、目が覚めると、この曲をかけながら、目覚めのコーヒーをいれていたものです。

豆を挽き、コーヒーメーカーからコポコポコポといい香りが漂うころが、ちょうど、ダラー・ブランドの、

ゲゲゲゲゲゲゲゲゲッ! ザッ!!

の声あたりなんですね。

静かに始まり、次第に高揚してゆくピアノ。
ちょうど、私の朝の目覚めの速度にシンクロしているのです。

尚子さんは、「寂しい気分になった」とおっしゃっていましたので、私が感じた感想とはちょっと違うのが興味深かった。

でも、「一人になっているときの気分」はたしかにそうかも。

なぜなら、私が目覚めてもまだグーグーと気持ち良さそうにイビキをかいて眠る友人は目覚めが悪く、私が起こさないと下手すると夕方まで平気で寝ているようなヤツだったので(笑)、いつも私は一人でコーヒーを立て、一人でこれを聞きながらコーヒーを飲んでいた。

これを聞きながら一人でコーヒーを飲むからこそ、染みてくるのであって、もし友人が目を覚ましてこれを聞いていたら違う気分になっていたかもしれない。

一人で聴いていたからこそ染みてきたのかもしれないな、なんてことを尚子さんの言葉で思いなおしました。


次は尚子さんオススメの《ティンティアナ》『アフリカン・ピアノ』より。



ピアノとダラー・ブランドの気持ちが完全に一体化して、すごく良い鳴りをしていると尚子さん。

たしかにそうですね。

北半球、しかも北欧のジャズクラブのピアノが、完全に南半球の空気を発しています。
オリジナルではなく、人の作った曲も聴いてみましょうということで、有名なスタンダードをチョイス。

セロニアス・モンクの《ラウンド・ミッドナイト》を『南アフリカのある村の分析』より。

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南アフリカのある村の分析

これはねぇ、かけている間、尚子さんと、
「あれれ? ここでメジャーになるんだ?」と言い合っていたのですが、普通のジャズマンだったら、マイナーコードで演奏する、けっこう曲のポイントとなる箇所がメジャーに替えて演奏されているんですね。

そこが面白い。一瞬だけ違和感を感じると同時に、ふわっとした解放感も感じる。
単にダークな色に塗り込めるのを意図的に避けているかのようでもある。
あるいは、完全にニューヨーカーになりきれず、妙なアクセントがクセになっている外国人の話し言葉のようなもの?

硬いタッチのピアノの音が、一瞬だけ解れ、ばらばらと瓦解してゆく感じが、妙に土着的な印象があり、これはこれで、まぎれもなくダラー・ブランドならではのオリジナリティでしょう。

お次は、中村尚子さんの新譜『新緑の中に雨が降っている』より同タイトル曲。



これについては、こちらにも感想を書いたので、是非お読みいただきたいのですが、とにかく、侘び・錆の効いたとても日本的情緒漂う秀作。

染みる楽曲。
染みる演奏。

文句なしに素晴らしい傑作です。

私が尚子さんをゲストにお呼びしようと思ったのも、尚子さんのピアノが好きになったのも、この曲を聴いて、頭の中でなにかがピーンとはじけたから。

基本的には、簡単なモチーフのリフレインなのですが、尚子さん曰く、「工夫して変化をつけようという気持ちにならなかった」。

この一言で、アフターアワーズ編にやる曲が決まりましましたね。

私のオリジナル曲、それも学生時代に組んでいた和風ジャズバンド「新撰組」のナンバーを尚子さんにお願いするつもりではいたのですが、当初は《蛤御門》という、もう少しエキサイティングな曲をやっていただこうと思ったのですが、私も簡単なモチーフの繰り返しの持ち曲があったので、《神無月》という曲に変更しました。

「内声が半音変わるだけでも、自分の中では気持ちがすごく変わる。それだけで自分は満たされる」と仰る尚子さん。
わかるわかる、その気持ち!

まさに私の《神無月》のサビも、簡素なメロディが相似形的に半音が上がったり下がったりするんです。

なにげに聞くと、なんの変化も感じないぐらい微妙な音程の上下かもしれないのですが、私にとってはじつは大ごとだったりするのです(笑)。

この曲を作ったときの気持ち、きっと尚子さんだったら分かるだろう!と思ったわけで、実際に《神無月》を演奏していただいたら、これがもう大正解!

ただでさえうらぶれた感じの曲に、効果的な「間」を設けてくれて、より一層うらぶれた感じに仕上げてくれました。

※この演奏は、番組アフターアワーズのみでの放送予定でしたが、ポッドキャストでも聴けるようになりました。こちらこちらでどうぞ!


さて、ラストは『ウォーター・フロム・アンシェント・ウェル』より同タイトル曲。



スローな8ビートチックなリズムにのり、フォークソングばりのメロディを管楽器のアンサンブルが柔らかく柔らかく繰り広げてゆきます。

私がダラー・ブランド(すでに当時は改修してアブダーラ・イブラヒム)の音楽的姿勢に興味を持ち、なおかつ自分が生まれた国(=土地)に根差したジャズを探求しようと思っていたときに、ヒントになった映画があります。

それは、彼のドキュメンタリー映画で『わが祖国・わが音楽』。
撮影された時期が、ちょうどこのアルバムが発表された時期だったので、思い入れもひとしおのアルバムなのです。

特に私は、日本的「和」の情緒もたたえている《ザ・マウンテン》という曲が大好きで、これを番組でかけようと準備していました。

しかし、中村さんの思い入れのある曲はタイトル曲のほうだった。
ドラマー、古澤良治郎さんから採譜を依頼された曲がこの曲だったそうなんですね。
古澤さんも渋い曲に目をつけますな~(笑)。

もちろん、私、この曲も好きです。
サビの一部がサイモン&ガーファンクルの《明日に架ける橋》そっくりなのですが(笑)、ま、それはご愛嬌ということで。

サイモン&ガーファンクルの《明日に架ける橋》も、私がものごころつく前からポップス好きのうちの親父がステレオで毎日かけていた曲なので、もうこの旋律と曲の運びが身体の中にしみ込んでいるのです。
だから、このような甘く上昇カーブを描くような旋律にはピクッとず反応してしまうのかもしれません。

もちろん映画の後半に、ニューヨークで演奏されているライブシーンと、アフリカの風景が重ねあわされ、
最後に一言、
「アフリカにも必ず緑は戻る」

うーん、感動の締めくくりなのでした!

ちなみに、下記画像で流れる《マネンバーグ》という彼の代表曲も『ウォーター・フロム~』に収録されています。



最近は、なぜかデヴィッド・サンボーンも取り上げている曲なんですが、サンボーンはいったいどういう心境でこの曲を演奏したくなったんだろう? 

個人的にはちょっとイマイチな演奏なんですよね(>_<) 
やっぱりオリジナルのほうが数段素晴らしい。


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