「電気マイルス」はクリエイティヴ心を刺激するのだ!

8月9日に放送された「快楽ジャズ通信」には作家・平野啓一郎さんにご出演いただきました。

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テーマは「エレクトリック・マイルス」。

当時のマイルスの試みは、作家や編集者が持つクリエイター心を刺激してやまない要素があるということを改めて感じました。

私は、広告制作や雑誌編集をしてきたためか、情報の見せ方や、メッセージのフォーカスのさせ方にはけっこうコダワリがあります。

送り手が伝えたい情報は、単にラウドにガナリ立てれば良いというわけではありません。
周囲とのバランス関係の妙で築き上げられることのほうが多い。だから、私はマイルスが追求した音の距離感(スペース)の探求には興味を覚えるのです。

同様なことを番組中で平野さんも仰っていました。

「メロディを奏でるトランペットは、小説で言えばストーリーテリングを担うパートです。受け手を前のめりにさせるためには、バックの情報量をどうコントロールするか。小説でいえば、背景の描写をどれぐらい簡素にするか、あるいはどれぐらい情報量を増やせばいいのか? そういうことを意識しながら、マイルスを聴いていますね」。

平野さんがいかに情報量のコントロールにこだわっているかは、新作『ドーン』からも伺えます。



この小説は、後半の“ある箇所”を契機に、爆発的に読書スピードに加速がかかるのです。著者から小出しに与えられ、蓄積された情報が、あるフレーズや場面転換を契機に、脳の中でものすごい勢いで解凍される快感。これぞ読書の愉しみですが、これは著者による情報量のサジ加減の賜物なのです。

「音楽は時間芸術なので、文学と近いところがあります」と仰る平野さん。ジラしとカタルシスのコントロールに長けたマイルスミュージックと平野文学は、近いところに位置しているのかも。

「世の中の情報量は、今後ますます増えていくと思いますが、小説としては、むしろその圧縮技術が今以上に問われるようになるはずで、課題だと感じています。」と平野さん。

マイルスがエレクトリック時代に行った様々な試みは、分野は違えど、表現者のクリエイティヴ心を刺激し、自身が抱える様々な課題に向かい合うキッカケを提供してくれるようです。


この番組の収録風景の一部はこちらからもご覧になれます。

(『MUSIC BIRD PROGRAM GUIDE 2009 8/31~9/27』より転載修正加筆)

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