放送第56回『打ち込みジャズ』(3)

さて「打ち込みジャズ特集」。

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番組で3曲目にかけた曲は、ブルース・ホーンズビーの『キャンプ・ミーティング』から同名のタイトル曲です。


Camp Meeting
キャンプ・ミーティング/ブルース・ホーンズビー

ピアノがブルース・ホーンズビー、
ベースがクリスチャン・マクブライド、
ドラムがジャック・ディジョネット

という豪華なピアノトリオなのですが、これに、安っぽい打ち込みパターンが加わります。

最初聴いた瞬間は、演奏冒頭に流れる♪ツッツタッカ・ツッツタッカ というチープな打ち込みリズムが、ものすごく安っぽく感じたのですが、演奏が中盤に差し掛かる頃には、「ん?なんだ?この感触は!」と微妙な心地よさを感じはじめ、最後には、このリズムがなくては、これほどまでに楽しい演奏にはならなかったのだろうな、と思うに至りました。

不思議です。
ほんと、♪ツッツタッカ・ツッツタッカ な安いリズムが、ピアノトリオのドンカマ(演奏者がプレイをする際の基準にする電子クロック音)程度の認識にしか感じなかったのですが、聴いているうちに、このリズムがある場合とない場合の演奏は、かなり違ってくるのだろうな、と感じるに至りました。

狂うことも乱れることもない、電子音のリズムにミュージシャンが演奏の意識を集中させると、「発展していく」という面での自由度は制限されてしまう。しかし、それぞれのメンバーが、「1つの基準」に意識を収斂させてゆくことによって生じる、余裕や空間という面での自由がある。

これ、一子さんのコメントの要約なのですが、まさに的を射ていると思いました。

というのも、私がこれを一子さんに聴かせた意図というのは、YMOをサポートしていた時期の一子さんの演奏意識を探ってみたいという意図があったから。

ほら、YMOって、ライブのときは、メンバー全員ヘッドホンしていたでしょ?
あれは、「テクノ」なイメージを増幅させるための小道具ではないのです。あそこに流れるのは電子クロック音。メンバーは電子メトロノームという基準に合わせて演奏をしていたのですね。

つまり、ブルース・ホンズビーの演奏とやっていることは同じなのです。
電子クロックの音が、リスナーに聴こえるか、聴こえないかだけの違い。

普通、生演奏は相手の音を聴きながらそれに合わせて演奏するのですが、YMOの演奏や、ホーンズビーの演奏には、クロック音という客観的な基準音も加わる。
この「時間を刻む音」が演奏する際の意識に加わると、ノリもかなり変わってくると思うのです。

高橋幸宏というタイトでジャストなドラマー、細野晴臣というセンスのカタマリのようなノリのツボを分かっているベーシスト。
この二人のリズムセクションも素晴らしいのですが、さらに彼らの肉体的なノリのセンスに客観的かつデジタルな物差しが加わることによって、YMOならではの独特なノリが生まれていました。

それと同様、ジャック・ディジョネットとクリスチャン・マクブライドというパワフルでレンジの広いリズムセクションも、♪ツッツタッカ・ツッツタッカ という単調なクロック音が加わるだけで、面白いノリを生み出している。

ちょっと、ひょこひょこした感じの楽しいノリ。可愛いといってしまうと語弊があるかもしれませんが、それでも聴いているうちに思わず口元がゆるんでくる、楽しさがあるのです。

ホーンズビーの執拗に日本的ズンドコ調を繰り返す和音も楽しさを倍増させています。

面子は素晴らしいけど、ジャケットが地味なので、私だったらショップの店頭でスルーしてしまいそうなアルバムなのですが、やっぱりチェックしている人はチェックしているのだなぁと思いました。

そう、じゃこのめさんなんですね、このアルバムを私に教えてくれた人は。

このアルバムは、ジャコ・パストリアス研究家のじゃこのめさん一押しのアルバムなのです。

ジャコ好きであると同時にマクブライド好きのじゃこのめさんは、このアルバムを漏らさずチェックしていた。
そして、「雲さん、これいいっすよ」と勧めてくれたのです。

私はほかの曲、たとえばパウエル作曲の《シリア》などに注目したのですが、「やっぱ、このアルバムで一押しは、これっしょ」と、かけてくれたのが、《キャンプ・ミーティング》だったのです。

最初は、なんだこりゃ? ずいぶんチープだし、単純なテーマだなぁ、妙なドンくささもあるなぁと思った聴いていたのですが、聴いているうちにグイグイと引き込まれていく自分がいた。

そして演奏終了後には、もう一回リピートして聴いてみたいと思いました。
「なんか、これクセになりそうですね、なんなんだ、このフィーリングは!?」
と私が行ったら、じゃこのめさんは、「ねっ?でしょ?でしょ?」と笑顔。

うーん、じゃこのめさん、しっかりアルバムのツボ押さえてるなぁと感心したものです。

とても普通ななんだけど、どこかちょっとだけ引っかかる要素があり、そのちょっとした引っかかりが、次第に気持ちの中で大きく膨らみ、いつのまにか中毒症状になっている。

ホンズビーら3人は、きっちりと目立たぬよう演奏の中に小さな時限爆弾を仕掛けていたんでしょうね。
まんまと、私の中で、その爆弾、炸裂しちゃいましたですよ。

この記事へのコメント

  • おっちん




    おはようございます♪♪


    雲さん♪♪



    先週の土曜日はインフルエンザA型に感染し高熱で聴けませんでしたわ♪


    やっと熱も平熱になりましたよ



    今週いっぱい会社から強制休暇をとらされましたよ♪♪



    (キ▼艸▼)爆



    次回の放送楽しみにしてますね♪♪



    そうそう



    雲さんのblogに登録しようとしたのですが!


    訳ありでメルアド設定してないんですよ



    Gメールだけなんで!!


    ナビゲーター雲さん♪♪


    インフルエンザ猛威をふるってます!!



    よりよい番組ナビゲーターとして放送収録番組にならないように予防してくださいね!!



    ウイルス除菌の部屋置きタイプの小さなマグカップくらいの殺菌ゲルをオススメしますよ!!



    クレベリン ゲルってやつです



    各部屋に置いてますわ!


    体調管理万全に頑張ってくださいね!!



    でわ!!



    ガッツでガンバ♪♪
    2009年10月28日 05:23
  • おはようございます。
    インフルエンザ、大丈夫ですか?
    体調管理、私も気をつけねば。

    ちなみに、私もメインはG-mailのみですよ。外出先とかで、ちらりとメールチェックしたいときなど便利なので。

    インフルエンザの猛威は、たしかにすごいらしいですね。
    個人的にはあまり実感わかないのですが、今回も収録日前日に、ディレクター嬢からインフルエンザが流行っているから暖かいもの食べて早く寝ましょうメールが(笑)。

    TFMにもいたるところに、対インフルエンザ用の抗菌消毒液(?)のようなものが設置されていました。

    早く体調直してくださいね。

    では。
    2009年10月28日 05:42
  • じゃこのめ

    雲さんが番組でかけたのは、いかにも打ち込みの典型的パターンを使った《ジャイアント・ステップス》かなぁ、と思っていました。
    この記事を読みながらiPodで聴きなおしましたが《キャンプ・ミーティング》の「日本的ズンドコ調」確かにそうですね。私は粘っこいファンク曲の印象を持っています。
    2009年10月28日 10:49
  • じゃこのめさん

    おはようございます。あのアルバム、もっとストレート・アヘッドな“フツーな(?)”感じのピアノトリオも多いのですが、あえてタイトル曲をかけたのは、打ち込みを導入することによって、あきらかに通常の演奏とは違うサムシング(ノリや演奏者の意識変化)が生まれるや否や、生まれるとしたら、その効果と演奏の演奏意識の変化などを一子さんからお話を伺いたかったという意図もあります。
    一子さんの曲⇒揺るがない定速リズムにより浮き立つプレイヤーの肉体性
    マイルス、ホーンズビー⇒機械と人間のノリの相乗効果
    坂本龍一、菊地成孔⇒リズムパターンのコピペ作業で揺らぐノリ
    アート・オブ・ノイズ⇒肉声サンプリングによる打ち込み4ビートについて
    と、
    いちおう、お伺いしたい話の柱を何本か建てて、それに見合う楽曲を当てはめてゆきました(単に良い曲だからかけてみました~的な目線は今回は廃しています)。
    時間の関係や話の流れで、用意したアルバムのすべてをかけられませんでしたが、それ以上に興味深いお話も伺えたので、自分的には満足満足。
    とくに《キャンプ・ミーティング》をかけたことによって、「狭まるけど自由にもなる」という、演奏者ならではの興味深いお話もいただけたので、貸していただいて正解でした。
    2009年10月28日 11:12

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