放送第33回『ピアノレストリオ』(4)

私が好きなピアノレストリオには、3人という少人数ならではの機動性を活かしたフォーメーションを感じさせる演奏が多いです。

たとえば、ブランフォード・マルサリスの『ブルーミントン(ライブ!)』なんかはかなり好きで、これは発売以来愛聴していますね。



1曲目が非常にエキサイティング。
かつ、手に汗握るかなり高密度な演奏。

しかし、演奏時間が15分以上と長いので、今回の放送では取り上げられませんでしたが、ピアノレストリオに興味をもった方は是非聴いてみてください。

ジェフ・ワッツ(ds)とボブ・ハースト(b)のリズム隊はどこまでも熱いのですが、ブランフォードのテナーは、まだまだ余力を残した状態で吹いているところがスマートというかカッコいいですね。

trio_branford.png


巡航速度で飛行しつつ、いつでも、ブースターのスイッチを「ポチッとな!」と押せる状態で、カッコいいフレーズを紡ぎだす演奏姿勢がクールです。

ときおりものすごいフレーズが飛び出すので、おお!スイッチがはいったな!と興奮させてくれる。

しかし、「はい、今回はここまで。今度はもっと凄いことやるかもよ」と、サッと引く。リズムセクションもそれに瞬時に反応。

このレスポンス能力の素晴らしさ。
巧みな引きと寄せのさじ加減。

これこそ、少人数ならではのコンビネーションプレイ。
ピアノレストリオの醍醐味だと思います。

そう、ピアノレストリオは、チームワークの音楽でもあるのです。
もちろん、それ以外の編成もチームワークは大事かもしれません。
特にビッグバンドなんかは。

しかし、大人数でのチームワークとはまた違ったコンビネーション、分かりやすいチームワークの快感がピアノレストリオにはありますね。


たとえば。
上記ブランフォードの演奏と方向性はずいぶん違いますが、同じくテナーサックス・ピアノレス・トリオ(曲によってはダブルベース、ダブルドラムもあり)のジョシュア・レッドマンの『コンパス』も、少人数編成ならではの、巧みな機動力が発揮された作品です。



たとえば、オーネット・コールマンは、ダブル・ベース、ダブル・ドラムなど、同じ楽器をダブらせることによって、「ズレ」と「ゆらぎ」の効果を演奏にもたらそうとしていました。

 

オーネットは重装備で揺らぎ効果を目論んでいますが、
ジョシュアの場合は、軽装備ならではの機動性を生かそうとしているところが面白い。

とりとめもなく定点移動を繰り返す演奏運動。
ジャズに「汗」「体力」「興奮」の要素を求める体育会系のファンは「パワーが足りねぇ!」と怒るかもしれませんが(笑)、これはこれで非常に高度な演奏だと私は感じます。

テナーサックス奏者がリーダーのアルバムゆえ、どうしても目線(耳線?)が、サックスのパワフルさ、非パワフルさに集中しがちなことはわかります。
しかし、リズムセクションとの高度なコンビネーションこそがこのアルバムの聴きどころでしょう。

学生時代にはピアノレストリオを組んでいた私からしてみれば、このようなタイプの演奏、すごく面白そうでやってみたいと思う。難しくて、無理だとはわかっていつつも(笑)。

特に、ベースが2台で演奏されているナンバーは面白そう。
一時期、ベース4人編成の音楽もやっていたこともあって、低音同士の距離間やスペース配分ってすごく興味あるんですよ。

楽器やっている私が「やってみたい、面白そう!」と感じたのだから、本職のミュージシャンだったら、なおさら興味深い音源に感じているかもしれませんね。

今回の新譜のジョシュアは、ミュージシャンズ・ミュージシャンしているというか、楽器やってる人のバンド心をくすぐるヒントをいっぱいちりばめているような気がしてなりません。

この空間配分への目配りは、デザイナーも触発するのでは? と私は思うのですが、実際はどうなんだろ?

もちろん、楽器やデザインの嗜みがない人が聴いても、「揺らぐ何か」、「うつろいゆく特殊な気分」を“感じる”ことが出来るアルバムだと思います。

ちょっと難解ではありますが、マインドをオープンにして、あなたの
鋭敏な研ぎ澄まされた感覚で対峙してみてくださいね。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック