放送第34回『マイルス・デイヴィスのミュート・トランペット』(1)

『高野 雲の快楽ジャズ通信~What Is This Thing Called Jazz?』、今回のテーマは「マイルス・デイヴィスのミュート・トランペット」。

ゲストには、プリズム出版の齋藤實(みのる)さんをお招きしています。


saito_mute.jpg


全国52局のコミュニティFMでは、本日午後8時からの放送です(この放送時間にあわせて、ブログをアップしています)。

ミュージックバードのジャズ・チャンネルでは、明日(日曜日)の22時より。
ミュージックバードのクロスカルチャー・チャンネルでは、来週木曜日の23時より放送されます。

さて本日は、番組中でかけたアルバムと曲をザザザザーっと紹介してゆきます。

カップミュートを使用した初期のマイルスの代表的名演ということで、『ウォーキン』から《ソーラー》。



初期マイルス、たとえばパーカーと共演している時期などに愛用していたのが、カップ・ミュートです。

後年のマイルスのトレードマークとなる音色のハーマン・ミュートのシャープさに比べると、まだ優しくて甘い音色のするミュートです。

ハーマン・ミュート使用での代表的な名演奏はやっぱりコレでしょう!ということで、『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』より《ラウンド・ミッドナイト》。



ハーマンミュートの音の先端の尖った感じの音色。
これこそが、「卵の殻の上を歩く男」マイルス・デイヴィスのイメージを決定づける大きな要因ですね。

《ラウンド・ミッドナイト》はハーマンミュートでプレイされるバラードでしたが、今度は、アップテンポのハーマンミュートも聴いてみようということで、『死刑台のエレベーター』より《ドライヴウェイのスリル》。



非常にスリリングかつサスペンス色に溢れた効果が出ていますね。

ハーマンミュートの音色を得たマイルスは晩年までこのミュートを愛用しつづけます。
ということで、晩年のマイルスのハーマンミュートの音色を味わってみよう! といことで、『ドゥバップ』より《ミステリー》。



ジャケットの赤いトランペットの先端に取り付けられている銀色の物体こそが、ハーマンミュート。
赤いトランペットは、マイルス愛用のマーティン製のトランペットですね。

もちろんミュートは、カップミュートとハーマンミュートだけではありません。
齋藤さんは、スタジオに様々なタイプのミュートを持ってきてくれたので、それぞれのミュートを取り付けて、実際にトランペットから音を出して音色の比較コーナーを設けてくれました。(後日解説をアップする予定)

その中でも、もっとも面白い効果があると感じたのが、プランジャー。
特に、まき舌でプランジャーをうまく操作しながら出す音色はコミカルでありながらも、こちらの耳をハッとさせる迫力がありました。

しかし、マイルスはプランジャーを使用していません。

そこで、いったんマイルスを離れて、現在プランジャーを使わせたら右に出る者はいないといわれているウイントン・マルサリスの演奏を部分的に聴いてみることにしました。

ウイントン・マルサリスとザ・リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラによる『スウィンギン・ウィズ・ザ・デューク』より、《ハッピー・ゴー・ラッキー・ローカル》。




最後にかけたのは、シンディ・ローパーの曲《タイム・アフター・タイム》。
1曲目はスティングも喋りで参加していることで有名な『ユア・アンダー・アレスト』より。



齋藤さんの選曲理由は、フランク・シナトラに通ずる歌心溢れるミュート・トランペット・プレイだから。
「80年代のフランクシナトラ」こそが、ミュートで“歌う”マイルスなのだそうです。

私思うに、このアルバムでは2つの“原曲超え”をしている曲があると感じています。

ひとつが、マイケル・ジャクソンの《ヒューマン・ネイチャー》、そしてシンディ・ローパーの《タイム・アフター・タイム》です。

「マイルスのハーマンにはインテリジェンスがある」と斎藤さんは仰っていましたが、まさにそのとおり。
ポップスの名曲もマイルスがハーマン・ミュートで演奏すると曲の格調が数段アップしてしまうんですよね。

というわけで、今日はここまで!

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック