放送第23回「ブルーノート 1500番台」


本日と明日放送の「高野 雲の快楽ジャズ通信~What Is This Thing Called Jazz?」のテーマは、「ブルーノート1500番台」です。


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本日の放送はコミュニティFMで午後8時より、
明日は高音質デジタル放送のミュージックバードでお届けします。

ゲストは、EMIミュージックジャパン・レコードプロデューサーの行方均さん。

じつは一時期、私と行方さんは同じマンションに住んでいたことがあります(笑)。
さらに、うちの妹が行方さんが作ったブルーノートのオムニバス盤(行方さんがジャケットのイラストをクレヨンで書いている限定盤)を『スイング・ジャーナル』の懸賞で当てたこともあるという“縁”があったりします(笑)。

さらに、以前J-Ladiesに加入していた女房も、行方さんのファンでして(笑)、「オレの番組に行方さんゲスト出演してくださることになったよ」と言ったらビックリ&喜んでおりました。

うちの女房、私のようなクルクルパーと結婚しておきながら、行方さんのような20近く年上の大学教授的風貌のインテリなオジサマが大好きみたいなんです(涙)。

出版社でいうと、Y社のO編集長とか、元T社のT編集長などがまさに好みのタイプ。
落ち着いた物腰と、決して饒舌ではなくとも本質的なことを言葉少なく語る渋い大人の男が好みみたい。

私もOさんやTさんにはお世話になりっぱなしですが、彼らの独特の佇まい、つまりホンモノのインテリが持つ、特有の静かな存在感にはいつも「かなわないな~」と思っています。

んじゃ、なんで俺みたいな軽薄ペラペラなやつと結婚したわけ?と訊くと、「なんか面白そうだから」だそうで(涙)、そうか、結婚前の付き合っている期間も含めると、女房とはかれこれ20年近くになりますが、20年近くも私は「面白い奴」と見なされていたわけね……(涙)。

今回の同録(放送で流される音源)をプレイバックすると、たしかに私は行方先生から指導を受けるデキの悪い生徒のような受け答えしかできていません。
さらに、行方さんの解説に聴き惚れてしまっているので、私は相槌ばかり打っています。

しかし、女房からしてみると、「これぐらいのバランスでいいんじゃない? あなたの喋りよりも行方さんの知的な喋りがたくさん聞けるから」だそうで(涙)。

たしかに言われてみれば、ヘンに私が無理して行方さんと対等に渡り合おうとしなかったことが、今回の場合は正解だったと思う次第なのです。

ディレクター嬢からは、「雲さん喋りが少ない~!」と怒られてしまいましたが(涙)、個人的には、今回はこれぐらいの喋りバランスでもよかったのかな、と思っています。

というわけで、今回の特集の「ブルーノート1500番台」。

今年は、ブルーノート70周年記念ということもあり、何回かに分けて行方さんからはご出演いただこうと思っています。

1500番台のブルーノートといえば、『サムシン・エルス』、『クール・ストラッティン』、『ブルートレイン』など有名なアルバムが目白押しですね。

しかし、今回はこれらのアルバムはかかりません。

何度かに分けてのゲスト出演となるので、今回は、まずブルーノートの「入口」の部分を行方さんにご教授願う内容となっています。

最初は、行方さんに「これぞ1500番台!をセレクトしてください」とお願いし、かかる曲はすべて行方さんのセレクトですが、行方さんのセレクトは、「アート・ブレイキーとホレス・シルヴァーの出会い」という、まさにハードバップの王道を突き進んでゆくブルーノート初期の音源に焦点が当てられた内容となっています。

そして、私はまるで行方教授の受講生のような気持ちでお話をうかがうというスタンスで、先述したように今回はいつもよりあまり喋ってません(笑)。

行方さんの一言ひとことは、非常に重く含蓄がある、無駄がない。
だから、あんまり私が余計な口を挟む余地がないのですよ。

たとえば、
ブルーノートの魅力は?問えば、「レーベルの成り立ち自体が本質的なものを求めている」「歌は世につれ、四は歌につれというが、不動でエッセンシャルで普遍なものを代弁しているレーベルなのだ」「ブルーノートのレコードを聴くことは、ジャズにおける本質なものに触れる行為なのだ」という含蓄のある応えが、サッと出てくるのが行方さんなのです。

さて、いよいよアルバムと曲の紹介にいきおうと思います。

1500番台の幕開け、入口までをたどろうというのが今回、行方さんが提示されたテーマです。

ブルーノート初期の看板スター、アート・ブレイキーとホレス・シルヴァーの記念すべき出会いを記録した1520番『ホレス・シルヴァー・トリオ』の《オパス・デ・ファンク》。



「ホレス・シルヴァーとアート・ブレイキーの出会いからハードバップというムーブメントが始まったといえる。」

「ビ・バップはビートを細分化するなど論理的なジャズの動き。それに対してハードバップはビ・バップのように理屈に走り過ぎたジャズを、黒人本来のエモーショナルな部分を取り戻そうというジャズの大衆化運動である。」

ブルーノートはジャズのエッセンシャルな部分を捉えているとお話される行方さんですが、行方さんの一言ひとことも短い発言の中にエッセンシャルな要素が含まれており、非常に勉強になります。

当時のブルーノートの親分、アルフレッド・ライオンは、「このトリオを土台に、管楽器を入れてスーパーバンドを作ろうじゃないか」と考えていましたが、これが具現化したエモーショナルなライブ録音が、泣く子も黙る名盤『バードランドの夜』です。

このアルバムより《チュニジアの夜》。



行方さんは昔、このアルバムをお酒を飲みながらよく聞いていたそうです。
じつは私も、大学のころは、夜な夜な友人の家でビールを飲みながらよく聴いていたものです。

この日から何かが起こっている。ジャズが本当に羽ばたいた夜という感じがしますね」と行方さん。

このようなかたちでブレイキーとシルバーの音楽が結実し、この録音から約1年後の録音として『ホレス・シルヴァー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』を行方さんはセレクト。

この曲は「ハードバップのある一面、極めて情念的な部分をとらえた一曲」「このときのクインテットのメンバーがそのまま、ジャズメッセンジャーズになった」と行方さんの解説は続きます。

アートブレイキーとホレス・シルヴァーを中核とするサウンドが、この時期に出来つつあった。

このような知識は、もちろん私は巷に溢れる幾多の「ブルーノート本」で読んで知ってはいますが、“日本のミスター・ブルーノート”から直接生の声で講義を受けると、まるで初めて知識を授けられているような気分。そう、気分は“ジャズ書生”です(笑)。

ブレイキー=ホレスのサウンドが出来つつあったことを象徴する演奏ということで、『ホレス・シルヴァー・クインテット』より《ザ・プリーチャー》。



「“静かなるケニー”のイメージの強いケニー・ドーハムが、派手なトランペットをぶりぶり吹いている」と行方さん。

そう、アドリブでは鉛色にくすんだ音色のイメージの強いドーハムが、かなりのハイノートを破たんなく気持ち良く吹いていますね。

モブレイのソロも歌いに歌っています。

次にかける2曲は、この管楽器奏者2名が、ブレイキーとシルヴァーに付き合ってもらった録音です。

最初は、ハンク・モブレイのカルテットより《アヴィラ・アンド・テキーラ》。改めて聴くと、とてもいいメロディに、素晴らしいモブレイのプレイ。

続けてケニー・ドーハムの《マイナーズ・ホリデイ》。
これはパーカッションが入ったラテンの要素を加えたバージョンで、クラブで大人気なサウンドテイストです。



このラテンバージョンの《マイナーズ・ホリデイ》は、80年代にイギリスで発祥した「ジャズで踊る」というムーブメントの火付け役となった《アフロディジア》で有名なアルバム『アフロ・キューバン』に収録されています。

『アフロ・キューバン』は、四谷の「いーぐる」でも昔からよくかかるアルバムですね。そのせいか、そのおかげか、このアルバムのサウンドの一音一音が私の細胞の中のひとつひとつに刷り込まれているような感じさえします。

「コルトレーンの音楽がジャズの本道である」とされていたかつての日本では、この手の音楽(コンガ入り)は「あまりにも快楽的である」と評価が芳しくなかったサウンドだったと行方さん。

「ジャズを聴くこと」がある種のスノビズムであるという風潮へのアンチテーゼ、すなわち「ジャズで踊っちまおうぜ!」という若者たちにとっての格好の素材が、《アフロディジア》が入っているケニー・ドーハム・オクテットだったのですね。

今、人気のクオシモードも《アフロディジア》を演奏していますが、


このクオシモードのアルバムは、行方さんのところから出ています(笑)。

ジャズメッセンジャーズの本当の誕生の記録であり、30センチLPの記録前提で最初に録音されたのが、『カフェ・ボヘミアのジャズメッセンジャーズ』ということで、このアルバムから、《マイナーズ・ホリデイ》

この熱気、この迫力、そして微妙にうらぶれた感じ(笑)。
もう、何も言うことありません。

個人的には、私、『バードランドの夜』よりも、『カフェボヘミアのメッセンジャーズ』のほうが好きで、こちらのほうが夜な夜な酒を飲みながら友人の家で聴いていた頻度は高かったかもしれない。

このアルバムはジャズが持つエネルギーや勢いだけではなく、センチメンタルさや、そこはかとないやるせなさもが加味され、なんていうのかな?「ジャズの喜怒哀楽」が凝縮された内容だと思っています。

だから、コーヒーも似合うけど、酒も似合うんだよなぁ(笑)。

エキサイティングな《マイナーズ・ホリデイ》ですら、なんだかとてつもない悲しみが音を突き動かしているような気がして、そこがまた魅力なんですね。

ダグ・ワトキンスのベースをフィーチャーした《ホワッツ・ニュー》も個人的には愛聴ナンバーです。

というわけで、本当はもう少し行方さんのお話を伺いたかったのですが、残念ながら時間切れ。

この続きは、5月あたりの放送でお送りしたいと思っています。

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