放送第21回『現代ヨーロッパのベーシスト』(1)

本日午後8時より放送の「快楽ジャズ通信」のテーマは、現代ヨーロッパのジャズベーシストです。

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ゲストはベーシストの池田達也さん。
私のベースの師匠でもあります。

最近は教則本も出版されましたね。
▼ベース初心者の方は、ぜひご一読を。


今でも私がベースを弾いているのは、池田さんからベースの楽しさと、ベースの接し方を教えてもらったことが大きいと思っています。
もちろん、理論や実技も習いましたが、それ以上に「音楽マインド」「ジャズマインド」を教えてもらったと思っています。

私はベースの先生が池田さんになるまでに、2人のベーシストに短期間ながら教えていただいていましたが、結局最終的に池田さんに落ち着いたのは、しっかりとした音楽の考え、ベースの本質とでもいうべきシビアな楽器観と姿勢に共感したからだと思います。

「ジャズのベースといえば、チェンバースでしょ!サム・ジョーンズでしょ!」と黒人ベーシスト一点張りだった私に、ヨーロッパのベーシストの素晴らしさを教えてくれたのも池田さんでした。

そういうこともあり、ヨーロッパのベーシストについて語っていただくなら池田さんしかいない! と思ったわけです。
したがって、今回は、プロベーシストの視点でヨーロッパのベーシストについて語ってもらおう!というのが番組の特集意図です。

池田さんはスタジオに1750年前後に製作された古いウッドベースを持ってきてくださいました。

なんと、晩年のレッド・ミッチェルが使用していたという楽器です。
レッド・ミッチェルの話題で盛り上がったので、まずは、ヨーロッパに渡ったレッド・ミッチェルのすぐれた「剛腕」っぷりを味わえる演奏をかけました。

これは、私が持ってきたCDで、アルトサックスのリー・コニッツとのデュオです。
『アイ・コンセントレント・オン・ユー』より《ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングズ》。



ヨーロッパに渡ったミッチェルは、ベースのチューニングをチェロのチューニングに変えて多重録音をしたり、和音を多用した演奏をしたりと、己のスタイルの拡張作業に没頭するようになります。

結果的に、個人的な好みを言わせてもらうと、西海岸時代の躍動感と剛腕っぷりが影をひそめてしまったかなと感じています。
しかし、この演奏は、まだまだミッチェルの迫力ある太くて躍動感のあるベースワークを楽しめる内容。グイグイと枯れたコニッツのアルトをリードするベースをお楽しみいただければと思います。


つづいて、ジョージ・ムラーツ。

これも私のセレクトですが、ムラーツのピッチカートのテクニック、弓弾きの凄さ、どんなにアップテンポになっても、常にウッディなニュアンスをたたえたムラーツ独特の暖かな音色を聴いてもらいたい、という意図でかけました。

また、ムラーツ好きの池田さんからの感想も聴いてみたいという意図ももちろんありました。

ピアニスト、アダム・マコーヴィッチとのデュオ『トゥゲザー・ホェアエヴァー・ウィー・ゴー』より、《チェロキー》。



アダム・マコーヴィッチは「白人版アート・テイタム」とでも言うべき、猛烈なテクニシャンです。
高音部から一気に駆け降りる装飾的フレーズを多用するところもテイタムに似ています。

しかし、正直、面白いかつまらないかと問われれば、つまらない(笑)。
最初の2~3回は「おお~、すげぇ!」と身を乗り出しますが、アルバム全編が同じようなフレーズの繰り返しが目立ちます。
いや、この《チェロキー》という曲においてすら、「あれ?またこのフレーズですか?」の連発です。

つまり、テクニシャンゆえに指が先に動いてしまい、目の前の曲に対しての深い思い入れがあまり感じられないのですね。
しかし、このようなピアノだからこそ、かえってムラーツのベースが際立つ(笑)。

柔軟にビートをコントロールしながら演奏にダイナミクスとメリハリをもたらしています。
そして、圧倒的な高速テンポもなんのその、猛烈なテクニックのピアニスト相手でもなんのそのベースワークが頼もしい。

ハイテンポで4ビートを演奏しつつも、木の温もりを失わない独特なムラーツのベースを楽しんで欲しいと思います。

この演奏が終わり、池田さんに感想を尋ねると、
笑顔で「いや~まいりました!」。

~つづく~

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