放送第11回目「ポール・チェンバース特集」(4)

私の好きなポール・チェンバースのベースのノリは比較的ジャストです。
いや、ほんの少し前へ出たニュアンスかな。

あのグイグイと引っ張る牽引力、
ずんずんと迫る迫力は、
音色の太さもさることながら、彼のノリも大きいと思います。

一般に黒人=アフタービート という認識が流通しているためか、黒人ベーシストのノリはタメがあって、ジャストなビートに対して若干遅れたノリ、それがリズムに粘りをもたらすという認識が強いですが必ずしもその限りではありません。

たとえば、レイ・ブラウンのノリも早めです。

チェンバースにしろ、ブラウンにしろ、他の黒人ベーシストと比べると早めのノリを有するベーシストから感じられるニュアンスは、誤解をおそれずにいえば、スッキリと洗練された都会的なノリです。

いっぽう、チェンバースのイトコである、ダグ・ワトキンスのノリはかなり後ろに引っ張るようなネバりがあります。

もちろん、私はこの遅めのビートも好きです。

とくに、ここにも書きましたが、カーティス・カウンスは大好きですし、同じく西海岸の人気ベーシストだったリロイ・ヴィネガーも大好きです。

彼らのように心地よいビートを提供するベーシストは、もちろんリスナーとして聴いていて気持ちもよいのですが、それ以上に同業者から好かれたのではないでしょうか?

あのような気持ちの良いビートを提供されれば、ソロイストは誰もが張り切ると思います。
遅いベーシスト、速いベーシストとベーシストには様々なタイプがいます。

特に楽器をやっていない人に向かって「このベースラインがいいんだよ」といったところで、おそらく「このベースラインのとこがどういいのか」ということは中々実感としてはわからないかも。

しかし、ノリという体感的な要素で聴けば、おのずと「この人はいいノリしている」、「この人のノリはアフタービートは効いているけど、ちょっと野暮ったい」とか、少しずつベーシストごとの個性が分かってくるのではないかと思います。

ちなみに、白人ベーシストには速いノリの人が多いですね。
弾く速度ではなく、体内時間の速さのようなもの。

私が感じる、3人の「速い!ベーシスト」を挙げると、
スコット・ラファロ、
ニールス・ヘニング・エルステッド・ペデルセン
エディ・ゴメス
でしょうか?

昔のミロスラフ・ヴィトウスには、それに「凄み」も加わる。
エレキ奏者だとジャコも相当速い体内速度を持っていますね。

ベースラインや音色のほか、ノリがベーシストの個性を決定づける非常に大きな要素なのです。



上記アルバムは、いささか極端かもしれませんが、ジャズマンの体内速度の大きな違いを楽しめます。

《リズマニング》をお聴きください。
リズムに対して、ぎりぎりまで引っ張って遅れ気味にレイドバックさせて吹く、テナーサックスのデクスター・ゴードン。
そして、ぎりぎりまで突っ込んだビートで、前へ前へとプッシュするニールス・ペデルセンのベース。
テナーサックス中心に聴くと、悠々と吹いているように聴こえ、ベースに耳を移すと、この演奏のテンポはかなり速いということに気づく。

このギャップが楽しい演奏です。

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