放送第16回「チャーリー・パーカー入門」(1)

本日ミュージックバードで放送される「高野 雲の快楽ジャズ通信~What Is This Thing Called Jazz?」の特集テーマは、
「チャーリー・パーカー入門」です。

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チャーリー・パーカーの魅力にとりつかれた男、「チェイシン・ザ・バード」というパーカー研究家サイトの管理人のよういちさんをゲストにお迎えしました。

▼よういちさんのサイト Chasin' The Bird
http://www.chasinthebird.com/

じつは、よういちさんと私は、1999年のほぼ同時期にHPを立ち上げています。(もうすぐ10周年!)

そして、サイトを立ち上げた直後あたりから、メールや掲示板を通してのやり取りはあったので、直接本人にお会いしたのは数年前ではありますが、気持ちとしては古い友人というイメージがあります。

私のHP「カフェ・モンマルトル」は、当時は、ラーメンやら童話やらウルトラマンなどの特撮の話題を中心に展開していたのに比べ、よういちさんのサイトは、一貫して「チャーリー・パーカー」一本槍。

サイトのイメージ通り、とても誠実で実直な方です。
しかし、こと話題がパーカーに及ぶと、物静かな口調の中から熱い気持ちがほとばしり、目の色が変わるほどのパーカー・フリークでもあります。

よういちさんと私がチャーリー・パーカーに抱く思いは共通していて、

一言、「気持ちいい」。
……以上!

なのですが、
この気持ち良さを、分かりやすい言葉でリスナーに一生懸命伝えようと試行錯誤をしている様子が、番組のいたるところから伺えます。

番組中、自分の感覚や体験をあれやこれやと、いろいろな言葉を駆使しています。

もちろん、音の気持ちよさを伝えるには、音を聴いていただくことが一番です。
しかし、それでも、少しでも言葉のガイドが、鑑賞の助けになればという2人の思いと熱気がリスナーの皆様に伝われば幸いです。

さて、パーカー入門に際して、我々はいくつかのキーワードを掲げました。

まずは「音の存在感」。

ヴォーカルと共演していても、複数人数のヴォーカル(コーラス)の存在感までをも食ってしまうほどの、音の輪郭。

パーカーの音の存在感のすごさとして、よういちさんがセレクトしたナンバーは、《イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト》。

デイヴ・ランバートのヴォーカル・グループと、ギル・エヴァンス指揮のビッグバンドの共演。そこにパーカーがソロイストとして参加しているという編成です。



なにがすごいかって、コーラスよりもパーカーのアルトサックスのほうが目立っちゃってるんですよ(笑)。

よういちさんは「ビッグバンドのサウンドから“浮き出るパーカー”」と評していましたが、この主張の正しさは、まさに聴いてのとおりです。

パーカーのアルトがはいった瞬間、コーラスがストリングスの一員としてしか聴こえなくなってしまいます。


次のナンバーは、パーカー入門には欠かせない『ウィズ・ストリングス』から《ジャスト・フレンズ》です。

キーワードは「飛翔感」。

よういちさんから、バード、もしくはヤードバードというニックネームの由来の解説があります。

いくつかの由来はあるのですが、よういちさんは「鳥がはばたく」説をとりたいとのこと。

つまり、彼の音そのもが持つ飛翔感を形容した言葉こそがバードなのではないのかと。

私もまったく同感!であります。

この鳥が羽ばたく様子をもっとも感じられる演奏として、よういちさんは、『ウィズ・ストリングス』から《ジャスト・フレンズ》をセレクトしてくれました。



私もこの演奏大好きです。

とくに、ストリングスが前奏を奏でた直後に、天空からヒラヒラと舞い降りてくるようなアルトサックスが最高だと感じています。

よういちさんも、この箇所こそ「鳥がパタパタパタと舞い降りる感じ」だとおっしゃっていました。

パーカーの生い立ちや育った環境(カンザスシティ)の解説がよういちさんからあり、それにちなんだブルースということで、『スウェディッシュ・シュナップス』より《K.C.ブルース》を。



マイルスのシンプルなトランペットソロもよういちさんは大好きとのことでした。
「余裕を持ってタメて吹いた吹きっぷりがなかなかいい」。


さて、次のキーワードは、「スピード感」。

「入門」ということも考慮し、3曲つづけて、どちらかというと「ほのぼの系」な演奏が続きました。

しかし、もしかしたら、「パーカー=のほほん」なイメージを持たれても困るので、激辛な演奏をかけないと!という私の意向で、スピード感とスリル溢れる2曲をかけました。

サヴォイのマスターテイクス集から《バード・ゲッツ・ザ・ワーム》と、『ナウズ・ザ・タイム』から《キム》を立て続けにかけました。

 

2人して、「このスリルたまらないっすよね~」。

よういちさんの名言、
「これは演奏ではない。これはスタジオで起きたひとつの事件である。アクシデントである」
このフレーズもたまらんですね。

熱狂的なパーカー・フリーク(ストーカー?)のディーン・ベネデッティの話なども出て会話も盛り上がってきたところで、少しスタジオの雰囲気をダウナーにするために、バラードもかけようということに。

よういちさんチョイスで、ダイアルというレーベルの録音から《バード・オブ・パラダイス》を。

その前に「ラヴァーマン・セッション」の話をして、ダイアルについての話をしたりもしました。

私は断然サヴォイ派で、サヴォイのマスターテイクさえあれば半年はそれだけで暮らせる自信があるほどなのですが(笑)、よういちさんは、サヴォイの良さも認めつつもダイアル派です。
ダイアルには様々なストーリーがあり、そのひとつが、先述したラヴァーマン・セッションだったりもするわけです。

パーカーの好不調の両面をとらえた貴重なレコーディングがダイアルの録音といえるでしょう。




次のキーワードは「音色」。
パーカーの音色は圧倒的な音色だという話題です。

よういちさん、「清く澄んでいて、それでいて野性味があて野太い。相反する要素が合わさって圧倒的な音色になっている」という、じつに分かりやすい説明。

リコの5番を使っているというような話をしたりもしました(ちなみにうちの女房はクラリネットとアルトサックスを吹くのですが、以前、パーカーはリコの5番を使っているという話をしたら、「そんなに厚いリードじゃ音が出ない」と驚いてました。ほかにも、サックス奏者は口をそろえて、リコの5番なんてとんでもないという反応が多いですね)。

また、パーカーの軽やかさ、心地よさは「慣性の法則を無視したような運動」と、またまた よういちさんならではの素敵な表現がはいります。

「すーっと入ってくる音。気持ちいい音楽、身体が喜ぶ音楽、そういう音楽です」とよういちさん。

「気持ちのいい音楽、快楽な音楽。快楽ジャズ。まさにこの番組のタイトルにあった音楽ですね」と私(笑)。

パーカーが持つ「明朗」なフレバーは、ラテンとも相性が合います。
ラテンナンバーにもパーカーの名演はたくさんあります。

これ、かける直前までよういちさんは《マイ・リトル・スエード・シューズ》にしようか《ママ・イネズ》にしようか迷っていたのですが、結局《ママ・イネズ》のほうを選んでいただきました。

曲の知名度や、テーマの親しみやすさは《マイ・リトル・スエード・シューズ》なんでしょうが、演奏そのものの勢いは、やはり《ママ・イネズ》に軍配があがるかな、と聴いていて感じました。




最後のシメは、やっぱりこれでしょう!な《コンファメーション》です。
アフター・アワーズ編でも解説されますが、よういちさんが運営するサイトの中の「パーカー曲ベストアンケート」の中でダントツ1位の名曲です。



私が好きでよく見ているパーカーのドキュメンタリーフィルム『セレブレイティング・バード』のエンドロールにも登場するこの曲は、まさに番組のシメにもピッタリ。

レコーディング用に、スタジオを3時間予約していたにもかかわらず、2時間15分遅刻してきたパーカーが、40分足らずの時間の中、一気呵成に録音してしまった演奏の中のひとつが《コンファメーション》です。

「やっつけ」の中からも、いや、もしかしたら「やっつけ」の中からこそ名演が生まれてしまうのがジャズの面白いところではありますね。

今回は、限られた時間の中、よういちさんのおかげで、さまざまなパーカーの音源とキーワードとなるポイントを盛り込めたと思います。

よういちさん、ありがとうございました。

でも、まだまだ今回は入門編。
続きもよろしくお願いします。

お次は、「パーカーのライブはもっと凄いぞ!」特集とか、
「パーカー派アルトと、パーカー本人の演奏の聴き比べ」特集などいかがでしょう?(笑)


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