というコーナーを作ってみようと思う。
これは、多くのジャズファンが所有しているであろう名盤・定番・有名盤の中から、
「掘り出し物の1曲」
にスポットを充てるコーナーだ。
有名盤・超定番のジャズのアルバムといっても、おそらく多くの方は、じつは持っているだけで、「所有している事実」だけに満足してる場合が多いんじゃないか?
有名盤の代表曲の1曲か2曲は耳タコかもしれないけれども、(たとえば『サキコロ』の《セント・トーマス》や《モリタート》のように)残りの曲って意外と覚えていないアルバムが多いんじゃないかな?
と、ふと思ったのがキッカケ。
だって、私がそうだから(笑)。
たとえば、私の場合は、ソニー・クラークの『クール・ストラッティン』を例にとると、レコードでいえばA面に収録されたタイトル曲と、《ブルー・マイナー》は各人のアドリブを口ずさめるほどよく聴いたつもりなんだけれども、じゃあ、B面の《ディープ・ナイト》のピアノの次のソロオーダーは、マクリーン? ファーマーどっち?と訊かれると、えーと、どっちだったっけ? と唸ってしまう(笑)。
次の曲の《ロイヤル・フラッシュ》はチェンバースのベースソロあった?
ドラムソロは、4バース形式だった? それとも曲の尺に合わせたソロ?
と聴かれても、一瞬、「えーと、えーと」と詰まってしまう(笑)。
べつに、暗記が良いということを言いたいわけじゃないよ。
でも、ソロオーダーが出てこないということは、しっかりと聴きこんでいないということの証明でもある。
問題にしたいのは、
持っている→分かったつもり
でいるつもりでもじつは、自分が思っているほど、深く名盤としっかり付き合っていない場合も多いんじゃない? ということ。
この状態のまま、
「なんかほかにいいジャズないの?」
「最近、いい新譜ない?」
と次から次へと新しいアルバムに散財する。
散財すれば、持ってるアルバムの量は増えるかもしれないけれども、持っている量が必ずしも「理解」や「楽しみ」につながるわけではない。
そういう当たり前な事実を踏まえた上で、もっと手許にある名盤を見直してもいいんじゃない? という提案なのデス。
さきほどの、私の『クール・ストラッティン』のお恥ずかしい例がまさにそうなのだが、たくさん聴いたつもりでも、じつは、アルバムまるごとは、意外と聴いていないことが多いのよ。
本当に愛着のあるアルバムは、そりゃあ、隅から隅まで味わいつくしているんだろうけれども、そういうアルバムって、100枚のうちの数枚なんじゃないかな?
だから、もう一回、皆さんお手持ちの定番を振り替えてみれば、意外と隠れた曲を再発見したり、新しい楽しみを発見する喜びがあるのではないかな?
というのが、このコーナーの趣旨。
そうすれば、なにもわざわざ、海のものとも山のものとも分からない新譜に散財して「金返せー」と憤る回数も減ると思うし、手持ちの盤で新しい発見が出来るのであれば、お小遣いの節約にもなるでしょ(笑)。
あ、べつに新譜を買うなといってるんじゃないよ。
本当に欲しいもの、気になるものは、やっぱり、そのミュージシャンを応援するぞ!という意思表示として、やっぱりキチンと買うべきだと思う。
ただ、手持ちの名盤を見直せば、散財が減るし、楽しみが増えるという経済的&精神的メリットがありますよ、ってことなんですよ。
そういうわけで、出来れば、週に1回ぐらいのペースで、この「聴くべし!」コーナーをやっていきたいと思ってマス。
さて、今回は、ホレス・シルヴァーの有名盤『ソング・フォー・マイ・ファーザー』の中から、《ロンリー・ウーマン》。

Song For My Father/Horace Silver
《ソング・フォー・マイ・ファーザー》はよく聴くが、この地味なピアノトリオの演奏、なんとなくスルーしちゃってる人も多いんじゃないかな? ということで、改めて聴きなおしてみましょう。
にぎやかで勢いづいた曲の間にひっそりと佇むこのメランコリックな味わい深い演奏。
陽気でキャッチーな曲を数多く書き、バッキングも派手に煽るシルヴァーだが、このようなセンシティヴで、ほのかにダークな一面があることがよく分かる曲。
演奏自体は、「これぞ名演!」と手放しに絶賛するような内容ではないかもしれない。
しかし、シルヴァーのかもし出す、この味わい深い空気は、“名雰囲気”であることには間違いない。
《ロンリー・ウーマン》は、オーネット・コールマンだけではないのですよ。
「あれ? こんな曲あったっけ?」と思った方は、是非、聴きかえしてみましょう。
深夜に一人でボリュームを落として聴くといいよ。
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