ディープかつ蒼黒く空間を滲ませる磁力を放つカサンドラ・ウィルソンの新譜は、スタンダード集だ。
20年前(もうそんな経つんだ!)に発表された『ブルー・スカイ』でもスタンダードをカサンドラ色に見事に染めあげていたが、今回は、さらにバージョンアップされた感がある。
《黒いオルフェ》や、《キャラバン》での沈み込む黒さは、想定内。
しかし、《セント・ジェームズ病院》も、ここまで蒼黒く底なしの世界に染め上げちゃったんだ! というところは想定外だった。
いやはや、ディープ!
妖しくグッとくるうねりを提供しているパーカッションのレカン・ババロラも、このアルバムの中での貢献度は高い。
カサンドラの妖艶さに、うねりの妖艶さが相乗効果で増幅され、深淵なる闇の世界を形作っている。
トランペッターのニコラス・ペイトンも参加、また、ベースはレジナルド・ヴィールと、メンバーもまた強力な実力者揃いだ。
暑い夏の深夜に聴くと、気持ちをクールダウン出来、落ち着いてグラスを傾けられるが、さて、これからめぐってくる秋や冬にこれを聴いたらどうなるだろう?
なんだか、絶望の底なし沼に突き落とされるようで、怖い(笑)。
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