寺島靖国のPCMジャズ喫茶ゲスト出演記(4)

今後の番組の新しい方向性を打ち出そうと熱弁をふるう寺島さんに
「今日の私は女性オンリーで行きたいと思います」
と言い、カバンから、1分ほどでどばーっと打ち込んだ企画書を取り出した私。

一応、皆さんにいきわたるよう、5部プリントアウトしてきたので、その場にいた全員に配る。

▼これね
PCMジャズ喫茶提案

「4案あるんですけど、皆様のリクエストや要望あります?」
「あるいは、このテーマはやってくれるなという内容のものあります?」

と寺島さんをはじめ、岩浪さん、長澤さんに質問をする私。

岩浪さんから、「1番と2番だね」と即効でお返事。

さすが、わかっていらっしゃる。
この順番は私がやりたい順番でもあるのだ。

「君はどれをやりたいの?」

と寺島さんから返されたので、

「全部やりたいんだけど」という言葉を呑み込み、

「じゃあ、最初から説明していきますね。まず1番は、タイムリーなネタと絡められます。すなわち、今日の夜、ブルーノート東京で大西順子のライブありますよね? 『スイング・ジャーナル』にも彼女の“復活”をうたった旧譜の広告も載っていることだし、ま、大西順子というキーワードは、話題っちゃ話題ですよね。んで、特に、彼女は新譜をレコーディングする“予定かもしれない”と先ほど岩浪さんがおっしゃっていましたが、とりあえず、今のところ新譜はない。だから、旧譜をかけるしかない。で、過去の旧譜で代表的なアルバムといえば、やっぱりデビュー作の『WOW』か、セカンドの『クルージン』だと思うわけですよ。

クルージン

で、この2枚にあふれる彼女ならではの特徴は何か?
そう、低音ゴリゴリ・ガンガンですよね。
この低音ゴリゴリガンガンをPCMならではの高音質で楽しんでもらいつつ、しかし、これだけだと、いつものとおり、“ハイ、1曲かけてみました”で終わってしまい、企画性としては弱い。
なぜかというと話題の発展性があんまりありませんから。

だ・か・ら、俺としては、同じ現役女性ピアニストで、“今”、旬かつ人気な山中千尋と対比させたいわけですよ。

山中千尋も低音ガンガンの演奏もときどきするんですよね。

たとえば、『マドリゲル』の《スクールデイズ》や、『アウトサイド・バイ・スイング』の《クレオパトラ》とかね。



今日は、《クレオパトラ》のほうを持ってきたから、それと、大西順子の『クルージン』にはいっている《ブルーセブン》と対比させたいわけですよ?

対比すると面白いですよ。
この二人の持つ音色、音価は全く違うから。

ゴリゴリというか、ゴツゴツ感のある大西順子に比べると、山中千尋には、そのゴツゴツ感はあまりないです。

し・か・し、彼女のアーティキュレーションは絹のようになめらか、なのです。
非常に、テヌートさせて弾いているのが、《クレオパトラ》では分かります。

以前『ジャズライフ』誌上でも本人が書いていましたが、
日本ではあまり一般的ではないけれども、アメリカではよく使っている人が多いという、「音の出ない鍵盤」というのがあるそうで、これでタッチやニュアンスの練習をしている人も多いんですってね。

このような話を記事に書くこと自体、山中千尋は、当然ながら、かなりタッチやニュアンスに気を配っていることがわかります。

もっとも、これは、どのピアニストでもそうですが。1つ例を挙げると、特にセシル・テイラーは、1日8時間以上ピアノの前で練習をするそうですが、この練習の大半には、鍵盤への指のタッチの強弱、ニュアンスのトレーニングをしているのだと、それも、最低音部の鍵盤から、最高音部まで、88鍵すべてを。

このような話を昔、私の師匠から話を聞いたことがありますが、ま、そこまでにはいかないにせよ、彼女はかなりタッチの練習にも気を配っていることは確かで、しかも、このタッチと音色のニュアンスの差が、明らかに低音部には出ているような気がするんですね。

だからこそ、ボリボリと不機嫌面が見えてくるぐらいぶっきらぼうな大西順子の《ブルー・セブン》の鍵盤ワークと、洗練され、疾走感あふれる山中千尋の《クレオパトラ》を対比させたいわけですよ。

しかも、“過去に注目されていた女性ピアニスト”の音と“今、注目されている女性ピアニスト”の音を、「低音」という同条件で俎上に乗せれば、話題性というか、興味を喚起しやすいでしょ?

「オンナ、低音バトル!」みたいな。
というのは冗談で、別にバトルとか、そういう発想とかでは全然ないんだけれども、とにかく同一条件下で、注目を集めている2人を比べるのって面白くありません? 是非やりたいんですけど」

と一気にまくしたてた私。

寺島さんは苦い顔をして、「うーん、長いなぁ」 と一言。

うん、確かに長いということが、今、コレを書いていて初めて気がついた(笑)。

……つづきは次回を待て!(笑)

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