なにもこんなに高速でやる必要ないのに、な、シリア

私はバド・パウエル作曲の《シリア》という曲が大好きだ。

名盤『ジャズ・ジャイアント』の2曲目。

あまりに有名かつ名演の《テンパス・フュージット》の次の曲なので、

いささか地味な印象もぬぐえないかもしれないが、

『ジャズ・ジャイアント』バド・パウエル

なかなかどうして、この時代の鬼気迫るパウエルが

少々肩の力を抜いて演奏しました、という趣きの演奏、なかなか素晴らしい。


実際にピアノの鍵盤で音を追いかけてみるとわかるが、

この山あり谷あり(黒鍵あり白鍵あり)の起伏に富んだラインは、

典型的にバップ的波形の音符の羅列ではあるにもかかわらず、

なんというか、すごくメロディアスで親しみやすい。

朗らかな楽想なのだ。


探してみると、結構多くののピアニストがこの曲を取り上げており、

私の場合、特にフィニアス・ニューボーンの『ザ・グレイト・ジャズ・ピアノ』の《シリア》は

生き生きと脈打っており、すごく好きだ。




これぞ爽快!

これを胸のすく演奏と言わずして何と言おう。

しかし、同じフィニアスの演奏でも、

こんなに速く弾く必要ないだろ!?

と突っ込みたくなるほど、

高速テンポのバージョンがある。


『ヒア・イズ・フィニアス』に収録されているバージョンだ。

でも、この《シリア》、テンポ設定は速過ぎ。

なんで、この曲をこんなに早く弾く必要があるのだろう?

と思ってしまう。

彼のピアノは粒立ちが明解なだけに、

高速テンポゆえの、ちょっとした指の“息切れ”さえも明確な音の輪郭として伝わってきてしまう。

ベースとドラムがしゃかりきになっており、よくもここまでついてこれましたと表彰ものではあるのだが、やはりピアノとの完全なる一致感は感じられず、とにかく、3者3様に全力疾走しているといった感じ。

この演奏を聴き終わった後は、

「お疲れ様でした」

と言いたくなってしまう自分がいる。

フィニアスに対してではない。

自分自身に(笑)。

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