放送第4回 ビリー・ホリデイ(2)

Songs For Distingué Lovers.jpg
Songs For Distingué Lovers/Billie Holiday


さて、今晩の「快楽ジャズ通信」は、ミュージックバードでの放送です。

ゲストは、ビリー・ホリデイで人生が変わった男、
「K-Style」の金田有記さん。

金田さんは、私の友人のアートディレクターです。


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収録前にパチリ!


ミュージックバードならではの「オマケコーナー」、「アフターアワーズ編」には、ディレクター嬢が登場。

荒雲金

彼女が上京するときに聴いた音楽の話とか、
彼女の「ビリー観」などが聞けます。

しかし、プレイバックして聴いてみると、ディレクター嬢の声はよく通るねぇ。
私のモゴモゴした声よりも、ずっとスッキリしていて聴きやすい。

今度から、私が台本書いて、彼女にパーソナリティやってもらおうかな、なんて(笑)。

ミュージックバードを聴きながらこのブログをご覧になっているリスナーさんは、どうぞ、最後の「アフターアワーズ編」までお聴き逃しなく!(笑)

さて、最初にかけたビリーですが、


奇妙な果実/ビリー・ホリデイ

から、《奇妙な果実》をサラリと。

正確には、私が喋っているバックのBGMとして薄くかけてもらっただけですが(笑)。

ここで、「暗いだけがビリーではないよーん」、「代表曲のイメージだけで、イメージが決定づけられてしまって聴かず嫌いになるのは勿体ないよーん」みたいなことを話しています。

「ビリーの声は可愛いな」と仰る金田さん。
「そんなビリーの声が好き」と仰る金田さん。

さて、さて、本当の最初の一曲は、可愛い声のビリーです。



から、《ブルー・ムーン》です。

ライブ録音です。
明るい雰囲気で、のびのび歌う楽しげなビリー。

今回のテーマの、
「暗いだけがビリーじゃない!楽しくビリーに入門しよう。」
(すでにビリーのCDを持っている人は「楽しくビリーを見直そう」)
にピッタリのイントロだと思います。

この曲を冒頭にかけようぜ! というのも、私と金田さんとの一致した意見でした。

この《ブルームーン》という曲、
「ビリーが歌うと違う曲に聴こえる。明るく聴こえる」
という金田さんのコメントが印象深いですね。
まったくそのとおりですよ。

お次は、金田さんが最も好きな《デイ・イン・デイ・アウト》です。


アラバマに星落ちて / ビリー・ホリデイ

新幹線の中で《デイ・イン・デイ・アウト》を何度も何度もカセットテープのウォークマンで繰り返し聴きながら、彼は岐阜から上京したそうです。

この明るく力強い歌唱、バーニー・ケッセルのギターも、ベン・ウェブスターのテナーも素晴らしいソロを聴かせてくれます。

これを聴きながら上京だなんて、不安なんてまるっきり感じないでしょうね。
希望に満ちた未来を約束してくれそうな歌です。

《デイ・イン・デイ・アウト》は、
金田さんの人生のテーマ曲と言っても過言ではない曲。
この曲こそが、毎朝起きた直後に、あるいはビーチで、冬のゲレンデで聴いていた曲なのです。

この曲を聴くと景色が色褪せて見えて不思議な感触なのだそうです。

また、喫茶店「ビリー・ホリデイ」と、そこのマスターのエピソード、心温まるマスターとの交流の話が素晴らしい。

「お前はこんな田舎にいちゃいかん!早く東京に行け!」
そう叱咤し、金田さんの背中を押してくれたマスター。

マスターの言葉に鼓舞された金田さんは《デイ・イン・デイ・アウト》を聴きながら上京し、現在に至っています。

……その『ビリーホリデイ』という喫茶店は、数年前になくなってしまったとのこと。
残念です。一度行ってみたかった。

さて、金田さんの愛聴曲の次は、私の愛聴曲の番。

この歌でビリーに目覚めたというナンバーをかけました。
ある日突然、ふわりと、そしてジワーンと染みてきたさりげない曲です。

《ベイビー・アイ・ドント・クライ・オーバー・ユー》を、デッカのマスターテイクから。



ビリー好きの女の子に見栄を張ってビリーを聴き始めたけれども、さっぱりわからず、ビリーの歌声の素晴らしさがまったくわからなかった私。
それでも聴き続けて、何年もたってから、ふと心に染みてきた最初の歌が《ベイビー・アイ・ドント・クライ・オーバー・ユー》だった。

そんな話をしましたが、ま、私の恥ずかしい過去などは、
▼コチラに書いてますので、
http://cafemontmartre.tokyo/music/decca_days_1/
ご興味のある方だけお読みください(涙)。

お次は、ビリーの歌い方について、金田さんからの説明があります。
マイペース、
そして、
微妙にズレているようで、最後は帳尻が合ってしまう。

そこのところも金田さんにとってはツボの1つ。

まさに、その指摘にふさわしい、リズムに対して決してジャストではないが、ビリー流のノリを楽しめる曲、『アット・ストリーヴィル』から、《ミス・ブラウン・トゥ・ユー》をかけました。

アット・ストーリーヴィル/ビリー・ホリデイ

¥2,090
Amazon.co.jp

ちなみに、上のジャケットは、CDの別バージョンのジャケットでして、私が持っているCDのジャケットは、

こちらのほうです。↓
story_billie

上のタバコを指にはさんだジャケットもジャズなムードがムンムンただよっていて秀逸なのですが、私は、下のほうのジャケットデザインのほうが好きですね。
金田さんも同意見でした。

アートディレクター的観点からも、このジャケットは素晴らしい!とのこと。

金田さんの人生を変えた喫茶店にも、このジャケットが飾られていたそうですが、一番印象に残っているジャケットだそうです。

この『ストリーヴィル』は、デッカレーベルでの録音をのぞけば、個人的には、もっとも好きなビリー・ホリデイのアルバムです。
ジャケットも内容も素晴らしい。

ライブ盤で、音はそれほど良くないかもしれませんが、それも含めて、ひとつのムード、ひとつの世界です。

さて、次に行きましょう。
ビリー・ホリデイといえば、恋人のテナーサックス奏者、レスター・ヤングの話を外すわけにはいきません。

レスターとビリーについての話は金田さんに解説してもらいました。

偉そうな態度から「レディ」と呼ばれていた彼女、ホリデイからデイをとって、レディデイ。レスターは彼女のことをそう呼んでいました。

一方、ビリーはレスターのことを、プレス(大統領/プレジデント→プレス)と呼んでいた、この二人が素晴らしい音楽を作っていた時代の録音が好きだという金田さん。

かけたのは、《オール・オブ・ミー》です。



これは30年代後半の歌唱で、声にも伸びと張りがあり、メロディも後年ほどフェイクせず、素直な歌唱を楽しめます。

金田さんも「声に透明感があって素晴らしい」。
個人的には、テンポ速く、いかにもビリー!という節回しの、



のバージョンも好きですが、素直に丁寧に歌っているバージョンも捨てがたいと思っています。

なにしろ、レスター・ヤングのサックスが素晴らしいし。

レスター・ヤングとの共演のあとは、
もう一人、偉大なるジャズマンとの共演をもう1枚。



これもデッカのレコーディングから、《マイ・スイート・ハンク・オー・トラッシュ》。

サッチモ(ルイ・アームストロング)とのデュエットです。

歌だけではなく、『ニューオーリンズ』という映画でも共演しているよ、と金田さんからの紹介もあります。
「ウディ・ハーマンも出ているんですよ」




また、ダイアナ・ロスがビリーの役をやった『ビリー・ホリデイ物語』の紹介もしつつ、この映画で、ビリーの壮絶なエピソードを知ったという金田さん。

さて、《マイ・スイート・ハンク・オー・トラッシュ》は、トボケたいい味を出すサッチモのヴォーカルと、抑揚を抑え、少し背伸びっぽく大人びた様子を見せるビリーとの掛け合いはなかなかです。

今回の選曲にあたって、特に私の選曲が、どうしてもデッカからの曲が多くなってしまいました。

やっぱり、デッカ時代のビリーには名曲・名唱揃い。
代表曲も集中しています。

なので、デッカ時代に偏り過ぎないよう、晩年のラストレコーディングからも1曲かけようと二人の間で意見がまとまったのですが、

選曲は金田さんにお任せしました。


ラスト・レコーディング / ビリー・ホリデイ

金田さんおっしゃるには、ラストレコーディングのラストの曲の《ベイビー・ウォント・ユー・プリーズ・カム・ホーム》がオススメとのことで、それをかけました。

たしかに、晩年のビリーは多くの評論化が指摘しているように、声は衰え、全盛期の頃の歌唱と比較すれば、見る影もないかもしれない。

しかし、だからといって聴かず嫌いはもったいない。

金田さんの選んだ《ベイビー・ウォント・ユー・プリーズ・カム・ホーム》は、むしろリラックスして聴けるビリーです。

効果的に絡むミュートトランペットも素敵です。

どうも、このアルバムについての様々なディスクレビューを見ると、
「壮絶だ」とか、「魂が震える」といった大げさな記述が多いですが、
どうでしょう? 
放送でこれを聴いているあなたはそう思いましたか?

少なくとも、《ベイビー・ウォント・ユー・プリーズ・カム・ホーム》に関しては、
「壮絶」、
「最後の歌唱に涙が止まらない」
といった表現は当てはまらないように私は感じるのですが……。

もっと表面的には淡々とした歌唱で、それなのに、かみ締めればかみ締めるほど、じわじわと味わいが深くなってゆく、そんな歌唱に私は感じるのです。

ま、このギョーカイには「聴かず書き」という必殺技(?)も存在するらしいので(笑)、
「薄幸な生涯を送った歌手のラストレコーディング」という先入観でもって書かれたレビューが、そのままコピー、孫コピーされてしまったのかもしれませんね(笑)。

私は、長らく『ラスト・レコーディング』を買う気になれなかったのは、誰のレビューか忘れたけれども(おそらく一人ではなく複数のレビューからだと思う)、

「壮絶」、「聴き手をゆさぶる」といった表現で腰が引けていたところがあります。

で、意を決して買って聴いてみたら、
思っていたよりも聴きやすくてホッとしたという(笑)。

したがって、CDのオビに踊る紹介文や、ジャズのガイド誌は、ことビリーに関しては大げさな表現が多いのだけれども、それをまるごと信用せずに、話半分に受け流して、もっと軽い気持ちでビリーを聴いていただきたいと思います。

そういう思いも込めての選曲でもありました。

金田さんのほうからは、「ラスト」ということに絡めて、

ビリーの死後、足に750ドルの現金が巻いてあった、
銀行には40セントしか貯金がなかった。
彼女は銀行を信用していなかった、
現金を信用していた、

というようなエピソードが語られます。

いよいよラストです。
根っからのデッカ好きの私としては、

最後はデッカで締めくくりたかった。



《ラバーマン》、《ポギーとベス》、《ドント・エクスプレイン》、《クレイジー・ヒー・コールズ・ミー》……
代表曲、名唱が多すぎです。

そこで、迷いに迷った私は《ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド》をかけることにしました。
これには金田さんも賛成してくれました。

「はずせませんね!」
という渋い声(笑)。

外せませんね
「外せませんね!」

この曲は、ある日ビリーがお母さんにお金をねだったときに、お母さんは1セントもくれなかったというエピソードがもとになっています。

お金をくれなかったお母さんに対して吐いたセリフが、
「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド!」

ビリーはお金をくれなかったお母さんに対して3日3晩腹を立てていたようですが、3日目に、「お母さんをギャフンといわせる歌が出来た!」
それが、この歌です(笑)。

感動的な歌なのに、エピソードはなんだか微笑ましいですね(笑)。

すごくビリーの声が生々しく、節回しもニュアンスもとても細かいところまで追いかければ追いかけるほど、う~ん、深い!
やっぱり、デッカのビリーは最高!!(笑)

▼一家に一個、デッカを常備しよう!いつか必ず心に染みるときがきます。



というわけで、今回の「快楽ジャズ通信」はいかがでしたか?

金田さんの渋い声に魅了された方も大勢いらっしゃると思いますが、
来週は、渋くない声の私が一人で番組をナビします(涙)。

テーマは、「《枯葉》名演集」です。
だって秋だし (>。∂)y-~~~
来週の放送もお楽しみに~!


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