放送第19回『ホークとレスター』(1)

放送第18回目の『高野 雲の快楽ジャズ通信』。
本日の午後8時よりコミュニティFM・52局にて、また明日は高音質デジタルラジオPCM放送で午後10時より放送されます。

今回のテーマは、「ホウクとレスター」。
2人のテナーサックスの巨人、コールマン・ホーキンスとレスター・ヤングの特集です。




先日「初ジャズ!」という電子ブックを発売しましたが、今回のゲストは、この本を私と一緒に書いてくれた高良俊礼さんです。

初ジャズ表紙
「東京渋谷―奄美名瀬」熱いジャズ往復書簡! 朝ジャズ・恋ジャズ・ねこジャズ・眠ジャズ……
詳しくはこちらをご覧ください。

高良さんは、奄美大島のCDショップ『サウンズパル』の主任で、「音のソムリエ」という異名をとる男です。と

いうか、私が勝手に名付けたんですが(笑)。

でも、最近はお酒とジャズの連載も飛行機会社の雑誌にも連載しているから、あながち外れてはいないでしょう。

「ソムリエ」を連想してしまう所以は、なんといっても高良さんの「知識と選択眼」です。

お店にやってくるお客さんとの対話の中から、お客さんのニーズをバッチリと掴み、ピシッとおススメのアルバムをセレクトする接客術は、まさに神技で、この洞察力の的確さと親しみやすい人柄は、ほとんど街の占い師のオバちゃん的ですらあります(笑)。

新宿の母ではなく、奄美の父?(笑)

実際、高良さんに占ってもらいたくて、……じゃなくて新しい「自分の音探し」に「サウンズパル」にやってくるお客さんは数多く、地元のみならず、内地からもわざわざ奄美大島まで「高良詣で」をするディープな音楽ファンもいらっしゃいます(私もその一人だったりします)。

声のトーンや、メガネのフレーム、よく見るとルックスも微妙に哀川翔に似てるなと思っていたら、高良さんの高校時代の担任の先生からも同じことを言われたことがあるのだとか。
しかも、その担任の先生は、高校時代の哀川翔の担任をしていたというのだから、面白いつながりです(笑)。

高良さんはCDショップの店員であると同時に、ギターを弾くブルースマンであり、またテナーマンでもあります。
何度か高良さんとセッションをしたことがあるのですが、柔らかいサウンドに適度な猥雑さも入り混じった親しみやすいテナーです。

好きなテナー奏者は表向きはコルトレーンですが(笑)、本音は、アーネット・コブ、ドン・ウィルカーソン、フレディ・ジャクソン、エディ・ロックジョウ・デイヴィス、ジーン・アモンズあたりの、タフ&ブリブリ系です。

一度、奄美大島で高良さんと二人で、ローランド・カークの音源をかけまくり解説をしまくるイベントを催したこともあります。

テナー奏者も演奏内容も私好みの高良さん。
では、今回のテーマ、レスター・ヤングとコールマン・ホーキンスの2人は、テナー奏者として高良さんはどう評価しているのでしょう?

一言、「神ですね」。

決まり!

彼に2大テナー巨人を解説してもらおう!

だいいち、1976年生まれの若い高良さんが、モダン以前の古いテナー奏者が好きだということ自体が面白いではないか。

若いテナー吹きが、ホークやレスターをどう聴き、どう感じているのかナマの声を聞いてみるのも面白いではないか。

なので、今回は高良さんのお力を借りる形で、コールマン・ホーキンスとレスター・ヤングの特集を組むことにしました。

ただし、さすがに奄美大島まで収録に行くわけにも行かず(行きたかったんだけど・笑)、今回は電話でゲスト参加していただくことになりました。

高良さんがホーキンスとレスターにはまるキッカケとなったのは、映画『カンザスシティ』の影響なのだそうです。
そこに登場する豪放磊落な親分肌のホーキンス、陰のある一匹狼的なレスター。

この2人のテナーマンに惹かれ、この映画が引き金となり、彼らの音源を聴くようになったそうです。

まず、番組前半はホーキンス編です。

ホーキンスといえば、まずはこれでしょう!な代表的な名演をお届け。

1939年に録音された《ボディ・アンド・ソウル》です。
 


「いや~いくら丼ですね~」と高良さん。

その心は?

「音のひとつぶひとつぶが大きくてツヤツヤしている。」

ホーキンスは、それまではビッグバンドのアンサンブル要因だったテナーサックスをソロ楽器にした貢献者ですが、「力任せに押しているように聴こえて、ちゃっかり歌っちゃってるぜ」とホークのプレイを的確に表現してくれました。

お次の《マイ・マン》は私のセレクトなんですが、これも力任せという言葉がピッタリのフランスで録音された演奏です。

最初はバックのオケのアンサンブルがかなりクサいんだけれども、ホーキンスが後半になってバリバリと吹きだすところが素晴らしいのです。



カチャカチャとサックスのキーの音もよく聞こえる生々しい演奏で、これぞホーク!と言わんばかりの名演ですね。

お次は『ジェリコの戦い』より《マック・ザ・ナイフ》。



有名なソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』の《モリタート》異名同曲です。ちなみにピアニストは、両演奏ともトミー・フラナガン。



ロリンズが『サキコロ』を吹き込んでから6年後の演奏ですが、両方を聴き比べると両テナーマンの個性・資質が浮き彫りになって興味深いです(ロリンズのほうは番組ではかけませんでしたが)。

モダンなフレーズを取り入れ、老いてなお前進をやめなかったホーキンス。

高良さんが豪放磊落な親分と形容しているとおり、ロリンズの演奏が「柔」だとすると、ホーキンスのテナーはどこまでも「剛」であり「豪」な印象がありますね。

少年時代のソニー・ロリンズにとってホーキンスはヒーローでした。
しかも二人はニューヨークに住んでいて、住まいも近所だったようです。

寒い冬の中、少年ロリンズはホーキンスの自宅の前で彼の帰りを待ち、家の前でサインをしてもらったというエピソードはとても有名ですね。

そんな大先輩ホーキンスも、ビ・バップ革命を経て生まれた新しいモダンのスタイルも貪欲に吸収していった。

大御所になっても全盛期のスタイルに落ち着くことなく、後輩のロリンズのプレイからエッセンスを吸収していた。そんなホーキンスのことを、「前進をやめなかった男。一人で最前線に立っていた」と表現しています。

この演奏の聴きどころは、「エンディングにあり!」と高良さん。
「あれ、もうエンディングなのか? と我に返ったエンディングが少年ぽくていい」

二人して、「こりゃもう、こりゃもう、こりゃもう」と意味不明なフレーズを連発していましたが、そうさせるだけの演奏であることはたしかです。

ホーク編の最後の曲は《ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン》。
今までブリブリ系が多かったので、バラード系はどうでしょう?と高良さんからの提案です。



うーん、これも十分ブリブリしているんですが……(笑)。

「オトコの美学。漢字の“漢”と書いて“おとこ”と読むほうの“漢の美学”ですね~」と高良さんは感激しておりました。

お次のレスター編は、明日アップしまーす!

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