放送第20回『A列車で行こう』(3)

ジャズは、“曲”の良さよりも素晴らしい“演奏”こそが醍醐味なんだと思います。

だからこそ、様々なジャズマンの様々な解釈、アプローチ、表現の違いを楽しんでもらうために、今後も番組では「曲シリーズ」は折にふれて続けてゆきたいと思います。

じつは今回の特集の俎上に乗せた《Aトレイン》は、ながらく苦手な曲でした。

メロディが単純明快過ぎて、あまりにもベタだから。
私はジャズにおいては、どちらかというと《サブコンシャス・リー》や《アウトゼア》のような複雑怪奇なウネウネ旋律が好きなんですよ。

しかも、この《Aトレイン》は、耳にする多くの演奏がビッグバンド編成だったこともあり、なんだか大味なアメリカのショーを彷彿させるものがあり、個人的には自分が求めるストイックでエキサイティングな音楽像からはかけ離れたポピュラーミュージックのようなイメージが強かったのですね。


しかし、たった一つの演奏の説得力が、これまで曲に持っていた偏見を払拭することもあります。

それがジェームズ・カーターの《Aトレイン》だったのです。



この圧倒的な演奏に触れてからというものの、《Aトレイン》の良さを少しずつ見直すようになり、少しずつフェイヴァリットな演奏も増えてきています。

やっぱりジャズは曲ではなく演奏なのだな、とつくづく思います。

じつは、ジェームズ・カーターの演奏をかけたいがために「Aトレイン特集」を企画したといっても過言ではありません(笑)。
それぐらい奔放なこの演奏が私は大好きなのです。

ちなみに、前回の曲特集の《帰ってくれれば嬉しいわ》は、リー・コニッツの演奏で曲の素晴らしさに開眼したこともあり、この演奏かけたさに企画しました(笑)。



奇しくも、私好みの両演奏は番組中盤のヘソの部分、3曲目になっていますね(笑)。
おそらく無意識に、自分が一番好きなバージョンをヘソに持っていき、この流れに合うような選曲をしていたのでしょう。

原曲のメロディやコード進行が好みでない曲でも、ある一人のジャズマンの演奏に触れたために180度曲に対する眼差しが変わることはよくあること。

だからこそ、テーマのメロディだけではなく、アレンジ処理やアドリブ部でどう演奏しているのかに耳をこらすのがジャズの楽しみなのです。

今回、あなた好みの《Aトレイン》は見つかったでしょうか?

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