放送第43回『サマータイム』(4)


今回番組中でかけた《サマータイム》の中でも、もっとも異色なのが、アート・ペッパーの『モダン・アート』に収録されているバージョンでしょうね。

といっても、オリジナルの『モダン・アート』には、《サマータイム》は収録されていません。

80年代後半にCD盤として復刻された輸入盤の『モダン・アート』に、ボーナストラックとして収録されたことによって、はじめて日の目を見た演奏です。

なんというか、ヒンヤリとした感触が心地よく、いや、真剣に聴けば聴くほど背筋が凍るような怖さのようなものがあり、ブルージーな演奏で処理されがちな他の《サマータイム》とは一線を画した演奏ではあります。

ポイントは、すすり泣き。
絶叫しないんです。

雄たけびをあげたい悲しさを、
抑えて、押さえて。
昂まる情感を
押さえて、抑えているところがポイント。

だからこそ、ラスト近くで聞ける「最後のひと泣き」が、とても映えるのです。

しかし、あまりに独特で、
かつ甘美な毒も盛られた蠱惑的な世界ゆえ、
聴きすぎると、虚ろな人間になってしまいそうな怖さも秘めているので、この演奏を聴くのは、年に数回でいいのかもしれません(笑)。

下手をすると骨抜きにされそうな、危険な《サマータイム》なのであります。



『モダン・アート』のアルバム評は、こちらにも書いています。

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