今週のこれを聴くべし!~ソニー・ロリンズの《ポールズ・パル》

ソニー・ロリンズと、ジョン・コルトレーンの唯一の共演が記録された演奏、《テナー・マッドネス》。

シンプルなB♭のブルースに乗り、互いの技量を競い合う、テナーバトルの演奏は、両者の個性がクッキリと浮き彫りになった興味深い演奏。

と同時に、演奏としても楽しめる内容となっている。

したがって、『テナー・マッドネス』というアルバムは、どうしても、1曲目のタイトル曲ばかりに興味と話題が集中しがちだ。

ま、それも仕方のないことなのかもしれない。

なにせ、ロリンズとコルトレーンが共演しているのは、この1曲のみなのだから。

しかし、しかし、アルバム後半の、コルトレーンが抜け、ロリンズがワンホーンで朗々と歌う演奏もなかなか聴けるナンバーばかりなのだ。

レッド・ガーランドのピアノ、
ポール・チェンバースのベース、
フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムスと、
当時のマイルス・デイヴィス黄金のクインテットのリズムセクションによる柔軟なリズムセクションをバックに吹くロリンズの「歌」は、

どれもが、ユーモア、メロディアスさ、大股にリズムに乗る吹奏と、素早くリズムに切り込んでゆく鋭さの緩急に優れ、一音たりとも聴き洩らせない音の説得力を持つ。

とくに、私の愛聴曲は、《ポールズ・パル》。
鼻歌で作ったようなシンプルなメロディだが、なかなか良い。

《ドキシー》や《アルフィーのテーマ》などもそうだが、ロリンズが作るオリジナル曲は、シンプルでメロディアスで、気軽に鼻歌で歌えそうな旋律の中にも、必ず、どこかに「おっ!」と印象に残るポイントがある。

《ポールズ・パル》もそうで、ほんとに、なんのことのない主旋律だし、サビのメロディも特に凝ったラインではないにもかかわらず、妙に心惹かれるものがある。

そう、シンプルだけれども妙に印象に残るサビ、つまり、起承転結でいえば、「転」にあたる部分のメロディ作りがロリンズはうまい。

単純なメロディながら、短いテーマのなかで小さな盛り上がりを形成するメロディによるストーリー・テリング。

そういえば、《セント・トーマス》の9小節目から12小節も、すごく印象に残る。

あの、

♪ミーファーソッ、ファーミーレッ

があるからこそ、

《セント・トーマス》のベタなメロディが、よりいっそう強烈に記憶に焼きつくのだと思う。

そういえば、先述した《ドキシー》も、《アルフィーのテーマ》もそうだった。

《ポールズ・パル》も、さりげないけれども小さな盛り上がりを形成する、あの部分、あのサビがあるからこそ、聴き手は「く~っ!」とたまらない思いになるのだ。

《ポールズ・パル》をもう一回、軽い気持ちでサラリと聴き返してみよう。
大傑作な名演ではないかもしれないが、小ぶりながらもピリッと締まった愛すべき曲、演奏だ。

これが録音されたのは1956年。そう、傑作『サキソフォン・コロッサス』が録音された年だ。

ロリンズがあぶらの乗り切っていた時期。だから、このような小品にも、絶好調なロリンズの勢いが隅々まで宿っているのだ。

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