放送第5回「《枯葉》特集」

さて、本日コミュニティFMで放送される「高野 雲の快楽ジャズ通信~What Is This Thing Called Jazz?」。

今回はゲストなし。
一人でしゃべってます(笑)。

特集のお題目は「枯葉」。

ジャズ・スタンダードの名盤として人気の高いこの曲を、取り上げてゆきます。

だって、秋なので(笑)。

ひとくちに《枯葉》といっても、
さまざまなタイプの演奏があり、
それこそ、ジャズマン100人いれば、100通りの《枯葉》があるといっても過言ではないほど。

しんみりとした演奏から、火を噴くようなエキサイティングな演奏までと、この曲にはさまざまなタイプの演奏があり、まるで料理で言えばオムレツですね(笑)。

シンプルだけども奥が深い。

さらにシェフの腕と個性の見せどころでもあります。

オーソドックスに素材の良さを追及した料理から、
変わり種の食材を使用した料理などなど、
ひとくちにオムレツといっても様々なバリエーションがあります。

そして、シンプルな調理法の料理なだけに、
それだけ作り手の力量やセンスがモロに出てしまうという、
カンタン、ポピュラー、ゆえに逆にいえば、
腕とセンスのリトマス試験紙的な料理でもあります。

《枯葉》という曲も同様。
シンプルで親しみやすい曲であると同時に、曲の構造自体も簡単。
本当にベーシックなコード進行で成り立っている曲です。

それゆえに、演奏者の腕とセンスがもろにバレてしまうところでもありますが、反対に、己の個性をリスナーにプレゼンテーションするには格好な素材でもあるわけです。

様々なジャズマンが演奏する《枯葉》を聴けば、それだけでそのミュージシャンの性質、個性が分かるので、初心者の方には「枯葉聴き」をお勧めしたいです。

入門者の方は、
「誰を好きになっていいのかわからない」という問題も最初はあると思います。

そういうときこそ《枯葉》。

好きなタイプの《枯葉》を演奏しているジャズマンであれば、その人はあなた好みのジャズマンである可能性が高い。

贔屓にするジャズマン探しにももってこいの曲なのです。

時間的制約もあるので、決定的名演としてジャズ史に名を刻む『サムシン・エルス』の《枯葉》は割愛させていただきました。

スイマセン<(_ _)>



このアルバムのバージョンは、時間にして、11分の長尺演奏。

ゆえに、これをかけてしまうと、残り時間が少なくなってしまう!
かけられる曲数が減ってしまう!

というわけで、今回は、
「短めの演奏で、それでいて個性・特徴のあるもの」
という視点で選んでみました。

なので、現在私がもっとも好きなペトルチアーニとエディ・ルイスの《枯葉》も泣く泣くカットしています……。
(もっとも明日に放送されるミュージックバードのバージョンでは、アフターアワーズ編でBGMとして流します。しかも、この演奏をBGMにして、とんでもない「オーディオ馬鹿」との対談がありますので、オーディオファンの方は明日の放送もお楽しみに!)


さて、最初にかけたのは、テナーサックス奏者、スタン・ゲッツの《枯葉》です。



柔らかで、はかなげなサックスのトーン、消え入るようなデリケートな演奏。
短い演奏ですが、完璧なゲッツ流「秋」の空間を形成しています。

お次は、ジョニー・グリフィン。
ゲッツと同じくテナーサックス奏者の演奏ですが、前のバージョンとはまるで正反対の演奏。
タフでマッチョなバイタリティのあふれるエキサイティングな演奏をお楽しみください。



人によっては、《枯葉》を、何故このような高速テンポで演奏しなきゃいけないの?
と感じる人もいるでしょう。

現に、新橋の某飲み屋のマスターは、このバージョンが大嫌い。たんなる楽器遊びだとまで言っています。

まぁ、言われてみればその通りなのかもしれませんが、「枯葉=秋」だからシンミリと演奏しなければいけないという固定観念もあると思うんですね。

先述したとおり、ジャズにおける《枯葉》は、料理でいうところのオムレツ。
料理人の意図、狙いによってまったく扱い方が変わってくるのです。

スタン・ゲッツの演奏は、比較的わかりやすいステレオタイプな「秋」かもしれません。新橋のマスターもこれならOKです。

しかし、そもそもゲッツとグリフィンは演奏に臨む際の発想が違うんですね。
ゲッツというシェフは、オーソドックスな調理で、おいしいオムレツを作ろうという視点。

グリフィンというシェフは、「紅花」のような鉄板料理屋のコックさんのように、お客さんの目の前で鮮やかな包丁さばきで、お客さんを驚かせ楽しませる、どちらかというと料理人の“技術”を楽しんでもらうという発想の演奏だと思います。

個人的にはグリフィンバージョンの《枯葉》は大好きです。
聴いてて燃えます。

テナーサックスの演奏が2曲続いたのでお次はピアノトリオ。
ウイントン・ケリーの《枯葉》です。



これまたオーソドックスながらも素晴らしい演奏。
ケリー流のリズミックで、シンプルなフレーズがころころとあらわれる小粋な演奏です。

お次はヴォーカルバージョン。
サラ・ヴォーンの《枯葉》です。

このバージョンはテーマのメロディが出てきません。
終始アドリブの連続です。
サラ・ヴォーンのスキャットが圧巻な《枯葉》をお楽しみください。



高速テンポ。
スリル満点!
人によっては好き嫌いの分かれるところかもしれませんが、《枯葉》として聴くのではなく、“サラの圧倒的な歌唱”を楽しむ音源として接してほしいです。


おなかいっぱいなバージョンをガッツリといただいた後は、ちょっと気分を変えてリラックスしましょう。

カル・ジェイダーの《枯葉》をマンボのリズムに乗って。



なかなかセンスの良いデザインのジャケットですね。
ジャケ写ではカル・ジェイダーがコンガを叩いていますが、この人、パーカッション奏者ではありません。
ヴィブラフォン奏者です(笑)。

ラウンジ気分でリラックスした演奏を楽しんでいただいた後は、まるで映画のような演奏、エロール・ガーナーの名演をおおくりします。



一応、ピアノトリオではあるのですが、なんというか、ピアノの一人舞台ですね。

非常にダイナミックレンジの広い演奏で、感動的に盛り上がるところから、ささやくような小声で弾く局面もありと、メリハリがある上に、曲の進行具合が、まるで映画のストーリーテリングのよう。
非常に感動的、かつ泣ける《枯葉》です。


最後は、ウイントン・マルサリスの《枯葉》。



非常にスマートで洗練された演奏です。
とくにテーマ部のリズム処理がおもしろい。

アップテンポになったかと思うと、テンポがゆるやかになったりと、カルテットの4人が、あたかも伸縮自在に時間を操るかのようなテーマ処理があざやかです。

マーカス・ロバーツのエキサイティングなピアノソロもかっこいいし、後半にあらわれる急速調のウイントンのトランペットにもしびれます。

というわけで、もっともっとたくさんの《枯葉》をかけたかったのですが、残念ながら今回はここまで。
また来年(もしこの番組がつづいていれば・笑)、第二弾も是非企画したいと思っています。

明日放送されるミュージックバードのアフター・アワーズ編には、とんでもないオーディオマニアをゲストに招いていますので、ミュージックバードに加入しているオーディオ好きの会員さんは、是非番組最後までお付き合いください。

笑うか、呆れるか、頭にくるか(笑)。
それは聴いてからのお楽しみということで!

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